1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710257
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷井 陽子 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (40243092)
|
Keywords | 清 / 政書 / 書誌 |
Research Abstract |
本年度は、国内の主要な図書館に収められている清代政書を、できるでけ幅広く調査することを中心に研究活動を行った。特に清代の法律関係資料のコレクションとして定評のある大木文庫・仁井田文庫を有する東京大学東洋文化研究所の蔵書から調査を開始し、数多くの資料を検討した結果、清代政書の分類整理、ひいては体系的理解につながると思われるいくつかの視点を得た。すなわち、(1)官輯官刊の中央官庁編纂政書の集成分類。律例・則例と呼ばれる種類の書であり、以前からまとまった範疇の書として把握されてはいるが、まともな書誌作成は行われていない。完全を期するのはもちろん難しいが、集成と呼ぶに近いものを作ることは可能である有用である。(2)官刊の地方官庁編纂政書及び民間出版の政書の収集分類。(1)に比して雑多なものが多く、種類が一定していないため、全体像を体系的に把握することは難しいが、比較的多くの出版物が見られる種類のものに関しては、収集整理して組織だった利用に供することが可能である。(3)官輯内部資料の民間流出物の位置づけ。特に刑部律例館の説帖であるが、内部資料の性格を出ないものでありながら、極めて高い権威をもち、しかも写本・刊本取り混ぜて雑多な形で出回っており、それぞれの編纂状況が明確でない。従来から法制資料として非常に重視されてきた割には、書誌整理が手つかずに近い範疇である。現在までに、特に初期の写本に焦点を絞って調査を行い、内部での編纂に基づいた一群の書を収集整理している。(4)官庁の原文書・帳簿類の整理。いわゆる档案であり、厳密な政書ではない。档案は今日では中国本国でまとまったものが比較的容易に見られるようになり、一部出版もされているため、以前ほど珍奇なものではなくなったが、国内でも内容的に非常に珍しいものが間々見られ、しかも分散していて書目から内容がわかりにくく、利用に不自由である。収集して内容別に整理すれば有用でもあり、かつ政書の形成を考察する上で極めて利用価値の高い資料となるので、本研究では特に後者の観点から取り上げて検討中である。
|