1997 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカにおける中国系移民排斥運動の歴史的研究
Project/Area Number |
09710266
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
貴堂 嘉之 千葉大学, 文学部, 講師 (70262095)
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Keywords | 移民 / 人種 / ネーション / 人種差別 / エスニシティ / ソシアビリテ |
Research Abstract |
従来のアジア系アメリカ研究では扱われなかった19世紀後半期の図像史料を整理し、翻訳書『カミング・マン…19世紀アメリカの政治諷刺漫画のなかの中国人…』(平凡社)を刊行した。中国系移民に関しては、時期を問わず全国的にネガティブ・イメージが蔓延していたと考えられていたが、南北戦争後の再建政治の時代には、中国人を「国民化」しようとする政治勢力が存在し、その中心的役割を果たした共和党急進派の思想の強い影響を受けたトマス・ナストという諷刺画家が、主要雑誌に新中国的図像群を描いていたことを明らかにした。ナストの図像分析を中心に、移民研究年報に発表した論文では、再建期のこの国民統合の文脈の中で、中国系・アイルランド系・黒人がどのように図像化されていたのか、詳細な研究をした。この時期の国民統合の政治と人種主義がせめぎあう社会情勢を投影した図像分析の手法は、移民研究における図像史料の利用意義についての問題提起ができたと考えている。また次年度本格的に取り組む予定の全国労働組合の成立と中国人労働者の関係についての予備的考察を進めた。「人種」「職種」「男女」の境界を越えて労働者の団結をはかった労働騎士団が、実際には中国系労働者に対しては例外的に「労働者」のアウトサイダーとしてのレッテルをはり、排斥運動に大きく西部鉱山地区において関与していたことを実証した。次年度は、この問題に焦点を移して、組合団長のテレンス・パウダリ-のマイクロフィルム史料を解析することを通じて、考察を進める予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 貴堂嘉之: "中国人移民のイメージの相克-トマス・ナストの風刺画の世界-" 移民研究年報. 3. 111-140 (1997)
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[Publications] 胡垣坤ほか: "カミングマソ-19世紀アメリカの政治諷刺漫画の中の中国人-" 平凡社, 176 (1997)