1997 Fiscal Year Annual Research Report
中世ヴェネツィアにおける市民の家屋管理と都市国家の財政
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09710268
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 京比子 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (40283668)
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Keywords | 中世 / ヴェネツィア / 都市国家 |
Research Abstract |
13世紀のヴェネツィアは都市の公的機能が発達する時代であるが、特に市民生活との関わりで興味深いのはサン・マルコ財務官という役職である。遺言執行人としての機能を発達させたこの役所は、市民の遺産(不動産収入を含む)を預かり、それを国の財政を支える重要な基金に投資するなどして、市民の家産運営と都市国家の財政の間に一種の共生関係を確立させることになった。今年度は 1260年代以前の遺言書を網羅的に調査した。未だ資料は分析途中であるが、おおよその結論を述べると、次のようになろう。すなわち、サン・マルコ財務官は初期は不動産管理などの仕事はほとんど請け負っていないこと、13世紀前半は市民の遺言書に不動産を代々子孫に残そうと言う意図はあまり見られないということである。また、最近刊行されたヴェネツィア史の大部の概説書の「コム-ネ(自治都市)時代」の巻によると、13世紀は干拓などによって都市空間が拡大する時期であった。それに伴い、13世紀後半には都市当局による公共の広場の管理というのが顕著に見られるようになっていく。13世紀後半から、市民の間の不動産を代々子孫に伝えようという試みが増えてくることと、このような都市空間の拡大・当局による管理にはどのような関係があるのか。興味深い問題であるので、今後はこのようなことも念頭において遺言書の検討とサン・マルコ財務官の機能の調査を進めていきたい。
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