1997 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代語従属節における、テンス・アスペクト体系の解明
Project/Area Number |
09710294
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 修 筑波大学, 文芸・言語学系, 講師 (30250997)
|
Keywords | 中古語 / 平安時代語 / 従属節 / テンス / アスペクト |
Research Abstract |
本年度は、主として中古語の相対的な時間関係をあらわす節のトキ構造について、現代語と対照しながらその特徴を明らかにした。 現代語において、「マエ・アト節の述部ル/タ形は、従属節の指す時点と、名詞の「まえ」「あと」の指す時点との前後関係をあらわしているのであって、従属節の指す時点と主節の指す時点との前後関係を直接あらわしているとは言えない。」ということが明らかになった。一方中古語ノチ節においては、その述部ル/タ形が、現代語マエ・アト節と同じ原理によってトキ解釈されるのではなく、一般的な主節接時基準を示している可能性の高いことが明らかになった。現代語マエ・アト節におけるル/タ形の、上述のふるまい上の特徴は、主名詞のトキ指示性という特徴に支えられていると考えられるが、中古語においては、主名詞にトキ指示性があっても、主節時以外の時点を基準にする用法の確例は見いだせない。 また現代語において、名詞「前-」「翌-」等を修飾する節は、トキ解釈において、現代語マエ・アト節よりも発話時基準解釈がなされやすいという特徴を持つことが明らかになった。一方中古語においては、一般的に、少なくとも「・・・より以前」をあらわす形態に関しては「つ」「ぬ」が主節時基準、「き」「けり」が発話時基準という機能分担を持っており、発話時基準の解釈は、かなり完全な形で保証されていることが明らかになった。 従って、少なくとも本年度取り扱った節の範囲では、全体として、中古語の従属節のトキ解釈は、現代語に比べ、主名詞などの性質に影響されることが少なく、述部形態に依存する(述部形態がトキ解釈を特定的に決めていく)傾向が強いということになる。
|