1997 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代から室町時代にかけての上申文書における類型的表現についての研究
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09710299
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Research Institution | Matsuyama Shinonome College |
Principal Investigator |
西村 浩子 松山東雲女子大学, 人文学部・言語文化学科, 助教授 (20248339)
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Keywords | 古文書の文体 / 解状・申状の文体 / 類型的表現 / 裁許申請文書 |
Research Abstract |
今年度は、当初の予定通り、研究の基礎資料の収集を行なった。『東寺百合文書目録』よりリストアップした。上申文書(解文・申状)のマイクロ複写3600枚余を、京都府立総合資料館から取り寄せ、現在、平安時代のものから翻刻作業を進めている。 また、今年度は、資料収集とあわせて、平安・鎌倉時代における解状・申状中に使用されている類型的表現の史的変化を概観した。そこでは、『鎌倉遺文』所収のものも対象に含めて調査・検討を行なった。その結果、平安時代には解文・申状の主流を占めていた類型表現が、鎌倉時代になって変化がみられるようになることがわかった。具体的には、裁許を要諦する部分の文言(裁許要請文言)に使用される語句、表現方法、また、文書の最初に内容の概略を記した「事書き」と呼ばれる部分の用字の顕著な変化が鎌倉中期に現われる。それまでの類型が減少していく一方で、新しい類型が増加しているのである。さらに、これらの変化は、文書の書出し・書止めの文言といった文書様式の変化とも連動して起こっていることが明らかになった。この成果は、『鎌倉時代語研究』第21輯に発表した(平成10年発行予定)。この結果をふまえ、来年度は、東寺百合文書に見られる類型的表現にも変化が見られるか否か、それが見られるとすると、変化の方向や変化の時期が今回の結果に沿うものであるか否か等を検討する予定である。
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