1997 Fiscal Year Annual Research Report
中世仮名文書の国語史的研究-形容詞・形容動詞の調査から-
Project/Area Number |
09710300
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
辛島 美絵 九州産業大学, 国際文化学部, 助教授 (60233996)
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Keywords | 形容詞 / 古文書 / なし / おなじ / かしこし / がたし / 仮名文書 / 書状 |
Research Abstract |
まず、「鎌倉遺文」所収の文書のなかで国語学研究の対象となる仮名文書を5900通と認め、その目録を日本語データーベースのソフト<桐>に入れ込んだ。さらにそれらを文書の作成目的によって、下達、上申、証文、書状、神仏に捧げる文書の5類に整理、分類を行った。その上で、「鎌倉遺文」の仮名文書にみえる全形容詞12,866語を抜き出し、同じく<桐>に入れ込んだ。 つぎに、仮名文書以外の中古・中世の資料である22作品を選んで、説話、軍記、日記、物語、随筆等に分類し、各作品の形容詞を抜きだした。その上で、仮名文書で非常に使用頻度が高く、かつ他資料ではさほどではない形容詞「なし」「おなじ」「かしこし」「〜がたし」他に注目し、東京大学史料編纂所外の施設において原本(あるいはその写真)で表記を確認しつつ、仮名文書の国語資料としての性質について考察を行った。 その結果の詳細は、拙稿「仮名文書の形容詞(一)-高頻度形容詞「なし」「おなじ」「かしこし」-」と「仮名文書の形容詞(二)-高頻度形容詞「〜がたし」、特に「申しつくしがたし」「つくしがたし」など-」に譲るが、(1)仮名文書の形容詞はほとんどが「なし」「おなじ」という基本的な語でしめられ、これらを除くと、多彩さに欠け、量的にも貧弱であること、(2)仮名文書の<相手とやりとりする>という作成の場が、当時の実際の対話で使用されたらしい形容詞の姿を映していること、他、従来全く明らかにされていなかった仮名文書の形容詞の実体と、仮名文書の語学的性質の一部が明らかになった。
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Research Products
(2 results)