1998 Fiscal Year Annual Research Report
新井白石・古賀精里・山梨稲川の作品を中心とする日本近世漢詩文の研究
Project/Area Number |
09710315
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
池澤 一郎 明治大学, 法学部, 講師 (70257228)
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Keywords | 『精里全書』 / 『稲川詩稿』 / 『陶情詩集』 / 宋詩 / 蘇軾 / 王安石 / 陸遊 / 浪人生活 |
Research Abstract |
本年度は課題名にある3名の中、特に新井白石の漢詩作品に研究が集中した。古賀精里については静嘉堂文庫所蔵の『精里全著』に収載された詩文の制作年次考証を行った。また山梨稲川については静岡県立中央図書館葵文庫の蔵する『稲川詩稿』中の詩文について、版本『稲川詩草』との本文の異同に留意しつつ、制作年次と作品内容について研究を進めた。 白石に研究が集中した理由は、新資料『陶情詩集』の内容が興味深かったことに因る。『陶情詩集』は長くその書名のみが知られその所在が不明であったが近年石川忠久氏により、名古屋の白石の子孫の方の家に蔵せらるることが明らかにされ、併せてその内容について検討が加えられた。石川氏の御研究は白石における『三体詩』受容の跡を明らかにされ、その中晩唐詩や宋詩の影響を示唆するものであったが、本研究ではその顕著な宋詩受容の跡をさらに具体的にしようとしたものである。宋詩については従来その影響を疑問視された蘇軾の摂取を『陶情詩集』中の作品によって、明確に指摘しえた。従来の研究は白石の詩が古文辞学派に先駆けて排他的に唐詩に学んだことばかりを論じていたわけだが、青年期の白石は唐詩にばかり拘泥せずに宋詩にも学び、ことに蘇軾・五安石・陸游といった大詩人の作中の秀逸な句を換骨奪胎して自作に採り入れていることが明らかになった。このことの理由としては五山以来、林家でも途絶えなかった宋元詩文推重の風が白石においても脈々と継承されていたことがひとつ考えられる。さらに白石が『陶情詩集』中の作を詠じた時期、浪人生活を余儀なくされており、日常身辺の雑事に喜びを見い出す宋詩が意に叶なったことも考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 池澤一郎: "蕪村と白居易ー夜半亭連句の一側面-" 国文学 解釈と鑑賞. 63・5. 133-138 (1998)
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[Publications] 池澤一郎: "田能村竹田の題画詩" 国文学 解釈と鑑賞. 63・8. 142-147 (1998)
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[Publications] 池澤一郎: "浦上玉堂と題画詩" 出光美術館館報. 104. 4-19 (1998)
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[Publications] 池澤一郎: "大田南畝の自嘲" 日本文学. 47・10(No.544). 37-47 (1998)
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[Publications] 池澤一郎: "漢詩と狂詩-大田南畝の雅俗意識-" 国文学 解釈と教材の研究. 44・2. 30-35 (1999)
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[Publications] 池澤一郎: "新井白石と宋詩-白石漢詩における蘇軾・唐庚・王安石の影響-" 明治大学教養論集. No.317. 35-60 (1999)