1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710318
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川崎 剛志 就実女子大学, 文学部, 助教授 (70281524)
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Keywords | 大峰縁起 / 熊野権現縁起絵巻 |
Research Abstract |
1 真福寺蔵『熊野権現金剛蔵王宝殿造功日記』以下、熊野金峰の縁起群六巻(五巻まで国の重要文化財)を調査・研究した結果、次のことが判明した。 (1)重要文化財未指定の『役優婆塞事』を含めて、六巻は同一料紙に、一筆で書写されたものである。書写年代は従来の推定よりやや遡り、鎌倉後期と推定される。 (2)六巻は一時に成立したものではなく、他巻の影響下に順次成立したとみられる。 (3)鎌倉初期、僧行俊が大峰縁起を掲げ、役行者誕生の地の領有を主張した動きがあった。六巻のなかには、その主張と密接に関わる内容も含まれており、行俊らの動きが成立の一大契機となった可能性も考えられる。 2 「大峰縁起」の伝本を調査・研究した結果、次のことが判明した。 (1)従来最善本とされてきた天理図書館蔵本は、明徳元年以後、数度の書写を経た後の近代の模写本であり、本文は必ずしも良質でなく、付訓にも不穏当な箇所が目立つ。どちらかといえば、兄弟関係にある京都大学附属図書館蔵の近代写本のほうが崩れが少ない。 (2)竹林院蔵本、無窮会蔵本等の抄出本の本文のなかにも上記の本より整った箇所があり、「大峰縁起」原本の姿を窺うためにはこれらとの精確な本文校合が必要となる。 3 和歌山県立博物館蔵『熊野権現縁起絵巻』を研究した結果、これが「大峰縁起」(天理本の類)の役行者の前生譚を踏まえ、構想されたものであることが判明した。 4 京都大学附属図書館島田文庫を中心に、修験道資料の書誌調査を進めている。
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