1997 Fiscal Year Annual Research Report
『五代史平話』『宣和遺事』における口語語彙・文法研究及び成立年代推定
Project/Area Number |
09710327
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 浩司 北海道大学, 言語文化部, 講師 (00281840)
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Keywords | 近代漢語 / 五代史平話 / 宣和遺事 / 全相平語 / 元代 / 講史 |
Research Abstract |
今年度は資料収集に重点を置き、計画を進めた。『五代史平話』については、最古で最良の版本である台湾中央図書館蔵本のマイクロフィルムを入手した。しかし、中国社会科学院蔵本は、図書館を通じて申し込んだが入手できなかった。やむなく、該本のみに基づき、語彙・文法調査を進めている。『宣和遺事』については、やはり最古の版本である台湾中央図書館蔵本のマイクロフィルムを入手し、内閣文庫蔵本、天理図書館蔵本を実地調査し複写を入手し、また京都大学文学部蔵本も複写を入手した。これらについて、テキストクリティークを行ないながら、語彙・文法調査を進めている。また、最近の近代漢語関係の辞書や研究書に基づき口語語彙と判断した、両者の語彙をパソコンに入力し、索引を作成中である。更に、成立年代推定の根拠となる周辺資料については、『唐代筆記小説』『宋代筆記小説』『元代筆記小説』『校正本 元典章』『元朝秘史全釈』『元人雑劇全集』等を入手、『元刊雑劇三十種』を複写し、以前からの『全相平話五種』の研究と合わせて、まず元代に関して、口語部分の抽出作業を始めている。 現在までの作業を通じて、両者の語彙は、歴史講談という内容の共通性もあってか、『全相平話五種』に近いという感触を得ている。ただ、『元曲選』のせりふ部分ほど口語が全面的に使われているわけでもない。また、同じ元代でも、『元典章』とは全く異なり、元明二代にまたがる『元朝秘史』の中国語部分とも異なっている。これから、唐、宋、明代の口語語彙と比較していけば、成立年代推定がより精密になると思われる。
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