1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710328
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中里見 敬 東北大学, 文学部, 助教授 (30250963)
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Keywords | 言語改革 / 文体論 / 白話文 / 白話 |
Research Abstract |
文語文から白話文への転換という、清末民初の言語改革に対して、文学と語学にまたがる文体論の立場から、その理念・背景を理論的かつ実証的に究明することを目的として、平成9年度には以下のような諸点について重点的に研究を行った。 1.『馬氏文通』以降の中国における近代言語学の誕生とその展開に関して、一般言語学の導入や中国語の普遍性/特殊性などの問題を中心に、その思想的理論的背景を探った。 2.銭玄同・黎錦熙ら国語運動家の著作を中心に、その理念および言語政策の変遷をたどった。 3.国語運動・大衆語論争、文法革新討論などにおける主要な論点を整理し、近代中国の言語問題を、国民国家の成立過程に位置づける作業を行った。 現段階で得られた成果を概括すれば、次の通りである。清末における西洋の言語文化現象との邂逅は、中国知識人に深刻な救亡意識を生ぜしめ、同時にそれを契機として、近代文学・近代言語学が誕生した。この段階では、中国の言語文化に対する悲観論が主流であった。しかし、文学革命の成功、白話文運動や国語統一における一定の成果を経た。1930年代後半には、それまでの悲観論を克服する方向で、言語学(国語国文学)における西洋模倣主義・欧化を批判し、国粋主義・中国化の新たな流れを生むに至った。 次年度においては、個別的成果を論文として発表するとともに、研究課題についての全体的な総括を行う予定である。
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