1997 Fiscal Year Annual Research Report
現代イギリス演劇(livewriting)における異文化の表象-現代英小説との比較
Project/Area Number |
09710337
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大藪 加奈 金沢大学, 外国語教育研究センター, 助教授 (30283146)
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Keywords | エスニック・マイノリティー / 現代イギリス演劇 / 現代イギリス小説 |
Research Abstract |
今回の研究は、イギリスの現代演劇の中で、エスニック・マイノリテイの文化がどのように表現されているかということを、同じようなテーマを持つ現代小説と比較するものであった。今年度の主な目標は演劇関係の資料収集および分類であったので、成果としてはこの分野の資料入手法とテーマ分布の把握があげられる。当初計画した劇団単位、出版社単位の資料収集方法は、各劇団の活動期間の短さや分裂・再編成の多さ、また研究・分類カテゴリーとしてこの分野が確立されていないことから、不適切であることがわかった。それに対して、Venueベースの上演演日を検索してゆく収集法は効果的である。 Livewritingに限ると資料収集は困難であったので、研究領域をエスニック・マイノリテイ演劇全体に広げた。この分野では、カリブ・アフリカ系演劇とアジア系(インド・パキスタン・バングラデッシュ)演劇が二つの主流といえようが、収集された資料を見る限りでは文化的アイデンテイテイと価値観の葛藤を主なテーマにしているアジア系演劇が、差別へのプロテストから出発し、近年テーマが分裂しているカリブ・アフリカ系演劇より優勢である。カリブ・アフリカ系では言葉を使った演劇よりも舞踏のほうが、沈黙の使い方に焦点をあてた今回の研究には適切なジャンルと言える。しかし、あと一年で一応の研究成果を上げることを目指し、ラジオ劇とダンスのジャンルは今回有意義な研究領域と認めるにとどめることにした。 同分野の小説の研究では、特に沈黙の使い方に特徴のある、Timothy MoのThe Redundancy of Courageにおける書き言葉とアイデンテイテイの問題を考え、平成9年度の紀要に発表した。 今後の研究予定.1.演劇の脚本と小説の両方で活躍しているHanif Kureishiの作品を比較分析して、ジャンルごとの文化表現の違いを調べる。2.資料収集を続け、データ・ベース化を図り、それをもとにしてジャンルの比較を広げて行く。
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