1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710342
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大森 文子 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (70213866)
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Keywords | レトリック / 意味論 / 認知言語学 / 換喩 / 転移修飾語 / 詩歌 |
Research Abstract |
本研究では、レトリックの中でも特に換喩(メトニミ-)に焦点を当て、その意味の成立に、外界についての認知のしかた、概念の形成の仕組みがどのように関与しているのかということを研究している。平成9年度は、レトリックに関する伝統的な諸研究、意味論・認知言語学の諸理論、及び本研究に関連する隣接諸分野の研究の内容を整理し、その成果、未解決の問題点、本研究の関連性について考察した。また、文学作品その他から、換喩、及び換喩と密接な関係を持つと思われるレトリックの表現、とりわけ転移修飾語のデータを収集し、それらについて分析、考察を行った。転移修飾語の意味と人間の認知の仕組みとの関係に関する考察は、論文「転移修飾語と換喩的認知」に発表した。本論文では、転移修飾語は本来修飾すべき語から転移し、意味的に無関係な語を修飾しているわけではなく、換喩的認知によって選ばれた対象を指示する名詞に対して、その対象に対するわれわれの認知のしかたについての情報を付与するという、被修飾語に対する修飾語としての役割を充分に果たしているということを主張した。換喩に関する認知言語学的考察は、論文「詩歌に見られる換喩」(印刷中)に発表し、換喩を人間の知覚・認知のしかたの反映としてとらえる認知言語学の知見をふまえ、換喩の直接の指示対象が知覚的、認知的に際立つ部位として注目されるのはなぜかという問題について議論を展開した。 平成10年度は、さらに、換喩及び関連するレトリックの表現のデータの収集を重ね、現在までの研究の成果を基礎にして、レトリックの意味の生成、解釈に関わる人間の認知のメカニズムの明確化のための理論の構築を目指す。なお、この研究の一部については、大阪大学・コペンハーゲン大学学術交流プログラム記念シンポジウム(平成10年7月開催予定)において口頭発表を行う予定である。
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Research Products
(2 results)