1997 Fiscal Year Annual Research Report
プラハのドイツ語文学における都市の近代化とその言語的表象
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09710357
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三谷 研爾 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (80200046)
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Keywords | プラハ / 都市 / 近代化 / 知覚 |
Research Abstract |
本年度の目標のひとつは、ヨーロッパ文化圏における都市経験とその言語的表象の相関を検証し、理論と歴史の両側面から一定のパースペクティヴを確保することにあった。従来的な文学史上のトピックとしてではなく、思想史や科学史が複合したテーマとしてこの問題をとらえている最近の研究状況を精査した結果、都市経験が人間の「知覚」と密接に関連していることが明らかとなった。18世紀に確立された視覚中心の知覚システムが、近代都市を記述するさいには失効し、解体へと向かっていくという大きな動向に照らして、各種の言説が考察されなければならないのである。これは、世紀転換期プラハの文化状況の研究という本課題にとっても、考察の出発点となる知見であり、その射程は大きいと考えられる。いまひとつの目標である<プラハのドイツ語文学史>関連、およびプラハ史関連の文献収集については、北海道大学所蔵の貴重書の調査によって、チェコ文化史ならびにチェコ・ドイツ交流史についてのデータを得た。 次年度においては、これらの資料にこまかな検討をくわえるとともに、プラハ出身の作家たちの文学作品からのデータ収集につとめる。そのうえで、どのような具体的な都市経験にもとづいて、プラハにかかわる言語的表象が形成されていくのかを考察する。そして最後に、ドイツ語圏のモダニズム文学の展開過程に照らして、プラハ的特殊性とヨーロッパ的な美的モデルネ全般に通じる普遍性を明らかにしたい。
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