1997 Fiscal Year Annual Research Report
現代ケベック文学におけるアイデンティティの検索-伸展する多民族化を背景として-
Project/Area Number |
09710362
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
真田 桂子 阪南大学, 流通学部, 助教授 (60278752)
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Keywords | ケベック文学 / カナダ / ロワ.ガブリエル / 多文化主義 / 多元主義 / 移民作家 |
Research Abstract |
本年度の研究成果としては、まず第一に、フランス系カナダを代表する作家であるガブリエル・ロワの作品を、最新のケベック文学の動向に重ね合わせて読み直し、分析を行なった。特に、マニトバの少数派であるフランス系に生まれ、英語系の学校で教育を受けたロワが、少数派である悲哀を抱きつつも、支配者である英系社会に対し開かれた相対主義的な眼差しを失わず、多様な民族を受け入れる普遍主議的な感性を培っていった過程を、主にその自伝『絶望と魅惑』を通して分析した。この分析の成果の一部は、論文Les images de l´anglophone chez Gabrielle Royとして『カナダ文学研究No.6』1997.12月に発表した。今後は、他者との共生のテーマを追求する素地となった、このようなロワの感性や思考が、ケベックおよびカナダにおける多文化主義や多元主義にどのような影響を及ぼしたかについてさらに分析を深め、本年6月フランスで行なわれる国際学会『カナダにおける二言語主義の再考』において発表する予定である。 本年度はさらにこのロワの研究と平行し、中国系のイン・チャンやブラジル出身のセルジオ・コキス、イタリア系のマルコ・ミコ-ネなど、90年代以降ケベックで活躍している最新の移民作家の動向について、東京のカナダ大使館研究情報センター等において、ケベックからの最新の雑誌などを通して、情報、資料収集に努め、専門家との意見交換を行なった。今後はこれらの作家の作品や資料の詳細な分析を進め、それぞれの作家において、アイデンティティの模索がどのように行なわれ、それが伸展しているケベック社会の多元化にどのように結びついているかを分析する。
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Research Products
(1 results)