1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710381
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
池田 巧 立教大学, 大学教育研究部, 助教授 (90259250)
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Keywords | 西番訳語 / チベット諸語 / 言語地理学 |
Research Abstract |
中国四川省西部の山岳地帯で話されているチベット諸語について,清代に行なわれた一種の言語調査記録である「西番訳語」の記述内容を主たる資料として,現代言語学による同地の諸言語の調査報告をつきあわせ,代表的な単語の分布地域を地図上に描き,その分布から諸語間の接触と交流の歴史を探ることが本研究の目的である。本年度は言語地図作成のための準備作業として,まず「西番訳語」に共通する語彙項目をコンピュータに入力し,データベースの枠組みを作成した。このデータベースを参照することで,各種「西番訳語」に記述された音訳漢字による語形の表記を一覧・検索できるよう「西番訳語」の各種版本ごとに継続してデータ入力を行っている。なお,これらの音訳漢字が表記しようとした当時の言語音がいかなるものであったかは,中国語音韻史の研究成果に照らして別途詳細な研究が必要である。従来の研究では,標準中国語音で読んでそれを近似値として音価を推定していたが,随所に四川方言音が混ざっている様子が見られるため,特に声調調値の推定などは全面的な見直しが必要となると予想される。今後はデータベースの音訳漢字の入力作業が終了次第,同地域のチベット系諸語の記述調査資料を幅広く収集し,データの拡充を計る予定である。いっぽう「西番訳語」の各本の最初のページに記された各言語(方言)の通用地域名の一覧については,すでにデータ入力を終えたので,各種の地理資料を参照しながら,おおまかな地点の同定作業を開始した。不明な部分も少なくないが,中華民国時代に発行された地図や地方誌なども精査して,可能な限りの正確を期していきたい。これらの作業と平行して,パソコンによる言語地図作成のためのソフトウェアや各種ツールについても徐々に整備を行ない,グラファックとテキストのデータをリンクする方法について研究を行った。
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