1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09710387
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
西原 大輔 駿河台大学, 法学部, 講師 (70286110)
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Keywords | 日本文学 / 植民地主義 / コロニアリズム / ポストコロニアリズム / 支那趣味 / 谷崎潤一郎 / オリエンタリズム / エキゾティシズム |
Research Abstract |
平成十年度は、引き続き、近代日本文学の中のオリエンタリズムについて研究を行った。主に対象としたのは、谷崎潤一郎による「支那趣味」の文学である。 大正時代の日本では、異国趣味の文学が大いに盛んになった。その先鞭をつけたのが、谷崎潤一郎である。彼は中国を憧憬し、その風俗物産の発するエキゾティックな美しさに熱中する。しかし、谷崎の中国に関する言説を検討してゆくと、そこにはオリエンタリズムの観念がしばしば見られる。中国について語る時、この作家は「幻想」「空想」「不思議な」「奇怪な」といった語彙をキーワードとして用い、中国を古代そのままの、進歩のない国として表象している。中国を描くにあたって、谷崎は西洋で形成されたオリエンタリズムを利用したのである。 本研究では、「支那趣味」が誕生した原因・背景を三つにわけて検討した。第一に、中国旅行の流行である。一九一一年、鴨緑江鉄橋が完成し、日本から朝鮮半島経由で大陸にわたることが可能となった。また西洋列強によって建設されていた中国国内の鉄道によって、中国を比較的容易に旅行できるようになった。これが、多くの文学者や画家の大陸旅行となって現れた。第二に、エキゾティシズムの伝播である。北原白秋らにはじまる南蛮趣味は、荷風の江戸趣味を経て、谷崎の「支那趣味」に影響していった。そして第三に挙げるべきは、永井荷風経由のオリエンタリズム受容である。『あめりか物詔』『ふらんす物語』で、荷風は西洋人が東洋人を表象するやり方、即ちオリエンタリズムを自分のものとして繰り広げた。熱烈な荷風愛読者だった谷崎は、このオリエンタリズムを、中国やインドに応用してゆく。これが「支那趣味」の誕生をもたらしたのである。
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Research Products
(2 results)