1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720004
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
西村 安博 新潟大学, 法学部, 助教授 (90274414)
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Keywords | 日本法制史 / 日本中世法 / 日本中止史 / 鎌倉幕府の法と裁判 / 和与 / 所務沙汰 / 検断沙汰 / 裁判外紛争処理 |
Research Abstract |
本研究は、鎌倉幕府の裁判に見える「和与」(=和解)に焦点を当てて、(1)「和与」が鎌倉幕府の裁判においてどのように位置づけられていたのか、を解明するとともに、(2)「和与」が鎌倉幕府の裁判を含む広い意味での紛争処理過程の中でどのような意義を有するものなのか、という課題に対して法制史的な見地からのアプローチを試みるものである。 したがって、本年度における研究作業は、既刊行史料を渉猟することによって、(1)鎌倉幕府の裁判所が判決を言い渡す際に発給した文書としての「裁許状」に注目し、第一に、紛争当事者による「和与」の内容を幕府裁判所が認める旨を記した「和与」認可裁許状を分析するとともに、第二に、紛争当事者によって「和与」がなされた事実が認められるような「裁許状」を抽出することによって、現実に紛争が発生あるいは再発した際の幕府裁判所の「和与」に関する取り扱いの実態を分析するための基礎的準備を行うこと、他方、(2)以上の分析を総合的に行うためにも、「和与」そして「裁許」にいたるまでに紛争当事者双方が裁判所に提出した「訴陳状」や他の訴訟関係文書を渉猟することによって、紛争処理過程における「和与」の総合的理解を得るための基礎的基準を行うものとして企画された。 以上の内容で企画された作業の成果としては、(1)「和与」に関する鎌倉幕府の裁許状が蒐集できたこと、(2)鎌倉幕府の裁判所が関与した紛争において「和与」の内容を記載した「和与状」が蒐集できたこと、(3)(1)および(2)の連関の実態を追求する準備が整ったことが挙げられる。時間的制約もあり、遺憾ながら(2)に関する作業には着手できなかったが、これについては(3)における研究成果を99年度以降に公表するための作業を進めるなかでさらに検討を深めてゆきたいと考えている。
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