1997 Fiscal Year Annual Research Report
行政事前手続にみる日本的法文化と法システムの構造変動に関する研究
Project/Area Number |
09720006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江口 厚仁 九州大学, 法学部, 助教授 (10223637)
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Keywords | 法システム / 行政事前手続 / 日本的法文化 |
Research Abstract |
本研究は日本における法利用の傾向特性を法文化論と関連させつつ多角的・総合的に解明する中期的研究計画の一環として、各種の行政事前手続が地方行政のレベルでどのように運用され、またそれが社会の側からどのように認知・評価されているかを理論・実証の両面から検証するものである。平成9年度については、当初の「研究実施計画」に沿って、おもに以下の2点に比重を置いて研究調査を行った。 1.各種意識調査・日本的法文化関連文献を収集・検討し、そこでの調査項目、具体的な設問の立て方、データ解釈の方法、そこから導かれた諸仮説等の比較整理を試みた。検討作業は継続中だが、当初の予想通り、主題となる言説のモード(例えば法学系のものとそれ以外のもの)に応じた「背後仮説」の差異をそこから読みとれそうな感触である。それが法的思考の傾向特性や日本人の法文化とどのようにリンクしているかは目下のところ不明だが、調査方法論をめぐる問題として引き続き検討を要する課題であると考える。 2.福岡市において紛争が顕在化しているマンション建設・再開発反対運動をいくつかピックアップし、紛争当事者・法曹・自治体職員等への聞き取り調査および各種映像記録を収集し、目下検討中である。やはり行政事前手続の不備がひとつの引き金になって紛争の激化につながっているケースが少なくなく、関係者たちの行政手続に対するイメージや具体的な交渉のプロセスの中に、何らかのパターン化された意識や戦略的志向性を読みとれないかと考慮中である。行政や裁判といった公式制度も住民たちにとっては戦略的オプションのひとつとして認知されていることはほぼ確実だが、同時に法的プロセスのもつ固有性に対する期待も少なからずあり、こうしたアンビバレントな志向性をどのような意識構造が媒介しているのかについてなお検討を加えてゆきたい。
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