1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720012
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 英明 神戸大学, 法学部, 教授 (60178762)
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Keywords | 信託課税 / 留保収益 / スローバック・ルール / 利子税 |
Research Abstract |
信託に関する税制は、その信託が投資信託を代表とする金融商品をつくるツールとして用いられる場合と、個人の資産管理の一手法として用いられる場合とを区別して構成されるべきである。 前者については、現行法は、投資信託の信託財産を投資家が直接保有しているのと、できるだけ類似の課税方法を実現する、という基本的な発想のもとに制度を組み立てているが、実際にはその擬制の程度は高く、また、損失控除の可能性がほとんどない点で問題がある。この税制の下で、今後、投資信託に関する行政的な規制が緩和・撤廃されていく過程で投資信託が多様化すると、税制が各種の投資信託間に不合理な区別を行なう結果となる恐れがある。したがって、投資信託からの損益は、他の投資商品に関する損益と合算して一つの所得類型を成すものとすべきであり、特に、そのような所得をまとめて新たな「雑所得」とすれば、タックスシェルターとしての投資信託の濫用にも対処可能である。 第二に、個人の資産管理の一手法として用いられる個別的信託に関しては、信託の柔軟性への対応として、将来の受益の有無・内容が不確実な場合については現行法における設定時課税の原則を変更し、現実の受益時まで繰り延べることが必要である。また、信託収益が留保されることに対応するため、繰延益を剥奪するための利子税を導入しつつ課税時期を現実の分配時にするか、信託自体に留保収益に関する納税義務を負わせるかの、どちらかの制度を設けることが適当である。その上で、信託を用いた租税回避の可能性を一般的に削減するため、委託者が信託財産に対する各種の権能を有している場合等における、新たな委託者課税信託制度を導入することが適当である。
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Research Products
(1 results)