1997 Fiscal Year Annual Research Report
「行政指導」論の再構成:国際的議論を可能にするために
Project/Area Number |
09720013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中川 丈久 神戸大学, 法学部, 助教授 (10252751)
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Keywords | 米国(アメリカ)法 / 紛争解決 / 法律解釈 / 情報公開 |
Research Abstract |
米国の、自治体レベルにおける行政指導の利用実態について、主に文献によって、具体的事例の蒐集を行なった。わが国では行政指導として議論されている事柄が、米国では主にlocal public disputesにかかる「新たな解決方法」という標題で議論される。そこでは、裁判所を介しないで、紛争当事者と行政当局(自治体当局)が「交渉」しつつ解決(「合意」)という手段を成功させるための、必須条件は何かが探られている。わが国の行政法研究者としての関心から言えば、それぞれの事例において、行政当局がどのように役割を果たそうとしていたかを中心に、事例を分析・整理している。 事例蒐集と同時に、行政指導(日本)なり紛争解決(米国)なりの捉え方の違いの一因と思われる、日米の制度上の違いについても検討を加えた。 ひとつは、裁判所「外」の紛争解決の在り方を、外在的に規律する、裁判所「内」の紛争解決の在り方、とくに法律解釈方法の違い(議会意図の扱い方の違い)である。この点の日米比較をする先行研究はほとんどないが、たまたま来日中であった米国の裁判官と、共同研究の機会を持ち、その成果を公表した。 いまひとつは、情報公開制度の違いである。米国の紛争解決における両当事者の行動上の特徴として、盛んに情報公開制度を用いて互いの手の内を窺いつつ、戦略的に行動することがある。そこで、この点をわが国に応用できないかについて考察する必要が生じたのであるが、わが国の情報公開条例と米国のそれとが、制度の作り方において基本的に異なるところがあるのではないかとの疑問を覚え、その観点から、最近の判決について検討を加えたものを公表した。
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