1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720014
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
佐々木 雅寿 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (90215731)
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Keywords | 憲法訴訟 / 違憲審査 / 救済方法 / 合憲補充解釈 / カナダ憲法 |
Research Abstract |
(1)憲法上の救済に有効な訴訟類型 カナダでは憲法訴訟を提起する際、宣言的判決を求める場合が多く、実際に裁判所も法律の合憲性に関する宣言的判決を多く出している。その利点としては、(1)スタンディングの要件が緩和されて利用しやすい、(2)裁判所の宣言的判決の後議会が柔軟に対応できるため、三権のバランスを不当に崩すことがない、(3)司法府と立法府の適切な役割を尊重しつつ憲法秩序を保障できる、(4)将来の違憲な国家行為を予防できる等が指摘されている。それに対し、裁判所の判決に政治部門が従わない場合、救済の効果はないといった欠点も指摘されている。 (2)憲法上の救済方法としての違憲判決の方法 カナダでは、1992年に人権憲章が制定されるまでは、合憲限定解釈や分離の手法のように法律の一部分や一定の適用のみを違憲・無効と判断することよりも、法律全体を違憲・無効とする救済方法が多く採用されてきた。その理由は、法律の一部分のみを無効として法律を実質的に書替えることは裁判所による立法権限の侵害であると考えられてきたからである。ところが、1992年以降、裁判所の役割に関する考え方が変化し、法律の一部分のみを違憲・無効と判断することも許容されるようになった。そこで今日では、合憲限定解釈、分離の手法、合憲補充解釈、合憲的適用除外、無効性の一時的停止といった救済方法が採用されている。具体的な要件はそれぞれの救済方法ごとに異なるが、裁判所が常に考慮する要素は、(1)実効的な人権保障と人権救済の要請という人権憲章の目的、(2)何時、どのような内容の法律を制定するかに関する立法権限および予算の配分に関する議会の権限を必要以上に侵害しないことである。つまり、人権保障の必要性、憲法保障の要請さらに三権のバランスが憲法上の救済方法を規定しているのである。
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