1997 Fiscal Year Annual Research Report
当事者照会制度の基礎理論的研究-アメリカ合衆国連邦民事訴訟における理論を手がかりに
Project/Area Number |
09720030
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
藤本 利一 和歌山大学, 経済学部, 助教授 (60273869)
|
Keywords | 当事者照会 / 新民事訴訟法 / 集中審理 / ディスカバリー / 開示制度 / 文書提出命令 / ディスクロージャー / 手続裁量 |
Research Abstract |
まず、司法機能の充実と裁判所の事件負担の過重について、過去の文献などにあたり、その問題点を再認識した。この問題に対する対処方法として、実務運営上のどのような努力がなされているかを知るため、大阪地方裁判所における争点整理手続および集中証拠調べ手続を新民事訴訟法施行の前後にわたり見学させていただいた。そこでは、書記官の活用や形式的な期日設定の排除などが行われている。 当事者照会制度をめぐる弁護士の対応については、第一東京弁護士会の当事者照会制度に関する研究会に参加させていただいた。この研究会ではさまざまな事例を想定し、それに対する対処法についてガイドラインを作成し、討議が重ねられている。 アメリカ合衆国の連邦民事訴訟手続に関する文献の収集は現在も継続している。これまでに収集し得た諸文献からうかがい知ることができるのは次の点である。すなわち、ディスカヴァリ-手続の濫用防止策や新たに導入された自動的開示制度が理論的にもまた実務運営上もさまざまな波紋を巻き起こしていることである。理論的には、ディスカヴァリ-制度自体がきわめて政治的な要因を孕んでいることが確認された。また、自動的開示制度については従来のアドヴァーサリ-・システムを侵害するものとして、強力に批判する研究者が存在する。実務運営上は、ディスカヴァリ-手続の制限について、市民権訴訟を専門に行うグループや弁護士からの反発が強い。このような事件類型においては、広範なディスカヴァリ-手続が威力を発揮してきたからである。また、自動的開示制度の導入に慎重な州が多く存在し、その導入を認める州も全面的な導入ではなく、一部実験的な導入にとどまる州も少なくない。
|