1997 Fiscal Year Annual Research Report
労働条件の決定・変更に関する労働契約論の観点からの研究
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09720036
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大内 伸哉 神戸大学, 法学部, 助教授 (10283855)
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Keywords | 労働条件 / 就業規則 / 労働協約 / 労働契約 |
Research Abstract |
今年度はまず、労働条件決定メカニズムの労働契約論の観点からの原理的研究を進めるために、その前提として、契約論一般の中で労働契約にはどのような特殊性があるのかを、伝統的な「従属労働」論の再検討という角度から進めてきた。検討の結果、今日では、「従属労働」という考え方は、要保護性の大きい「独立労働」の登場と要保護性の小さい「従属労働」の増加という現象に直面しており、様々な労働形態を統合できるような新たな労働契約論の構築が必要であるという問題意識をもつに至った。次年度は引き続き、このような観点から、労働契約論の検討をしていく予定である。 また労働条件の不利益変更をめぐる判例の最近の著しい発展の中で、判例を労働条件変更法理という大きな枠に中でどのように位置づけていくかも検討した。労働条件変更法理においては、集団的労働条件決定のプロセスと個別的な労働者の保護のプロセスをいかに調整していくか(たとえば、定年延長にともなう高齢従業員の賃金の引下げを労働協約・就業規則の変更を通して行う場合、どのような集団的プロセスで変更を行うか、若年従業員より不利益の度合いの大きい高齢従業員の個別的利益をどのように保護していくか)が重要なポイントとなるが、判例法理を原理的な観点から分析すると、この問題について必ずしも十分な理論的対処ができていないということが明らかとされた。そこで次年度は、このような問題について、外国法(とりわけドイツ法、イタリア法)では、どのような処理が行われているのかについて、判例分析を中心に詳細に検討していく予定である。 以上の分析・検討の成果は、次年度中に、モノグラフにまとめて公表する予定である。
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