1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720038
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
諏佐 マリ 熊本大学, 法学部, 助教授 (40284731)
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Keywords | 寡占的協調行為 |
Research Abstract |
寡占市場においては、相互依存的な並行的価格行動がとられるのが一般であるといわれているが、かかる行動の反競争効果は著しく、そのためにいかなる対応措置を講じるかが、我が国を含め諸外国に共通の課題となっている。このような同調的な価格設定行動については、経済学の分野におけるゲーム理論の観点から、かかる行動が、いわゆる純然たるカルテルとは別に成立しうることが、理論的検討を通して明らかになった。このように、寡占市場に特有な並行的価格設定行動が、各事業者の単独の行動の一致した結果であるという理論的可能性が否定され得ない以上、そのすべてをカルテルとして、規制の対象に含め、有効な措置を採ることは困難となる。アメリカにおいては、シャーマン法1条にもとづく、カルテル規制の範囲を大幅に拡大してかかる問題に対処すると同時に、その射程に含まれない行為については、シャーマン法2条、又は連邦取引委員会法5条に活用している点が注目されていると指摘されている。 平成9年度において収集した、シャーマン法2条および連邦取引委員会法5条にもとづく判・審決例を整理した結果、とくに、寡占的な協調行動を容易にする行為を、単独行為であっても規制の対象に含めている連邦取引委員会法5条の活用に着目して検討を進めることとした。平成10年度においては、連邦取引委員会法5条の審・判決例から導き出される法理を丹念に検討して、同条の役割について明らかにすることが課題となる。本年度において収集・整理を行ったアメリカの審・判決例を精緻に分析・検討することにより、我が国の独占禁止法にもとづく規制に対して、立法論的なものも含めた重要な示唆を得ることができると考える。
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