1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720039
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
米津 孝司 東京都立大学, 法学部, 助教授 (30275002)
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Keywords | 能力主義 / 日本型雇用システム / 労働契約 / 変更解約告知 / 解雇権濫用法理 / 就業規則 / 約款規制法 / 信義則 |
Research Abstract |
能力主義、成果主義を軸に実務的な広がりをもちはじめている個別的労務管理の手法は、年功序列:終身雇用を核とする従来の日本型雇用システムを基盤として形成されてきた日本の労働契約法理に大きな変容をもたらす可能性を有している.日本の労働契約法理の特徴は、ひとことでいえば厳格な、意思主義、明確な合意による権利義務関係の定立という古典的な契約原理を大幅に修正し、労働関係の時間的な展開に対応した利益調整的な枠組み、いわゆる継続性原理に基づくとされてきた.その典型は、就業規則法理や配転出向法理にみることができる. 日本型雇用システムの変更と労働契約法理の関係を考えるうえで焦点となるテーマが変更解約告知論である.同法理を採用されたとされるスカンジナビア航空東京地裁判決は、理論的にはかなりラフなもので、先例としての意義については過大評価されるべきではなく、とくに解雇権濫用法理と関連が未解明であることが明らかになった.今後、ドイツにみられる異義を留めた承諾について解釈論的・立法論的な可能性を検討する必要がある。 ルフトハンザ事件においては労働契約における付加給付の撤回留保条項の効力が問題となったが、これは、従来就業規則法理で処理されてきた労働条件の不利益変更の契約法的処理を行うものとして注目される.ドイツ法上は、撤回留保条項に対する約款規制法理の適用の有無が問題となっており、日本法の解釈論としても労働契約の内容コントロールのあり方・枠組みの総合的検討が必要となる(公席良俗論・信義則法理を中心に).
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