1998 Fiscal Year Annual Research Report
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09720039
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
米津 孝司 東京都立大学, 法学部, 助教授 (30275002)
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Keywords | 日本型雇用システム / 個別的労働関係 / 労働契約 / 能力主義的労務管理 / 成果主義 / 断続的信頼関係 / 熟練の成度化 / 契約法 |
Research Abstract |
現在我が国においては、年功序列、終身雇用、企業内組合を中核とする従来の日本的雇用システムが大きく変容する過程にある。労働関係の「個別化」として特徴づけされるこの動きは、具体的には、年俸制をはじめとする成果主義的な賃金制度に典型的なように、従来型の集団主義的な労務管理から、能力主義的な個別的労働管理への移行というかたちで実現化されつつある。しかしながら、能力主義的人事賃金制度の定着のためには、個別労働者の能力を正当に評価し、またこれにともなう紛争を解決するための精度的枠ぐみを必要とする。労働契約法において、これは就業規則法理に代表される集団主義的な労働条件決定・変更システムや身分設定的法律行為として把握されてきた我が国労働契約観の根本的な見直しを意味する。現下の深刻な不況を背景に、安易な減量経営・労務コストの削減策として能力主義が悪用・濫用され、いたずらに個々の労働者(特に中高年労働者)の自己責任が強調される傾向がみられるが、労働契約関係が、継続的信頼関係をベースとしてなり立つ点は、今後も基本的に不変であるとみなければならない。長期的な信頼的期待関係の下にあった契約の相手方を、従来の経緯を無視して、現在時点での給付能力評価に基づき一方的に不利益処遇することは、この契約原則に抵触する可能性が大きい。今日急増している個別労働紛争の多くは、我が国労働条件決定システムにおける「熟練の制度化」の未成熟に起因するものであり、労働契約法もこの文脈において再構成することが必要である。継続的な信頼関係の下における行為債務については、一般契約法(民法)においてもその法理形成をめざす模索が始まっているが、「熟練の制度化」という観点からする労働契約法の体系化・法ドグマテイークの確立は、この理論動向にも少なからぬ寄与をなしうるものと思われる。また、真の問題解決のためには、労働関係の「個別化」に対応した労働協約制度や従業員代表制度の検討が課題となる。この場合、従来の有利原則論に典型される、労働者の集団的代表システムと個別的労働条件規制のあり方を、契約法理に内在化して再構成すことが必要となろう。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 米津孝司: "労働判例回顧・経済的事由にもとづく解雇" 労働法律旬報.
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[Publications] 米津孝司: "書評 和田肇『ドイツ労働時間法』" ジュリスト.
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[Publications] 米津孝司: "労基法32条の2(一ヶ月単位の変形労働時間制)" 法セミ・コンメンタール・労働基準法第4版.
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[Publications] P.Wedde,米津訳: "労働法における規制緩和と柔軟化" 日独労働法協会会報. 創刊号. 31-47 (1998)
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[Publications] 米津孝司: "外国人労働者の労災と損害賠償額の算定" 法律時報. 70・3. 125-128 (1998)