1997 Fiscal Year Annual Research Report
NTATAを中心とした自由貿易と地球環境保護の法的調整に関する例証的研究
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09720040
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Research Institution | Kobe University of Commerce |
Principal Investigator |
川瀬 剛志 神戸商科大学, 商経学部, 講師 (60275302)
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Keywords | NAFTA / WTO / GATT / 地域環境保護 / 「貿易と環境」 / ワシントン条約 / モントリオール議定書 / バ-ゼル条約 |
Research Abstract |
昨今、多国間環境条約(MEA)が政策手段として多用する通商制限が、GATT/WTOに代表される国際的な自由貿易規範と法的緊張関係にあることが問題視されている。この点については地域経済統合が多国間フォーラムのWTOに先んじてその調整作業を進めており、とりわけ北米自由貿易協定(NAFTA)の試みは学ぶべきものが多い。NAFTAは、その締結交渉の終盤においてクリントン民主党政権が環境ロピーの強い圧力を受けたため、これに北米環境協力協定が附属し、環境政策上の域内紛争そのものを調整する機能を有している。また、製品の規格・基準、補助金、その他輸出入制限についても、環境保護にかかる諸要因を考慮しつつ、その通商阻害性を評価すべきことが規定されているなど、「貿易と環境」問題への取り組みの優れた先例となっている。 本研究の主題であるMEAの問題については、NAFTA104条をがこれを規定している。これは優先条約条項(trumping treaty claus)と言われ、MEA上の通商制限措置がNAFTAの通商自由化義務と抵触する場合、前者が優先される旨を規定する。但しかかる措置は、他の効果的かつ合理的に利用可能な代替手段がない場合に限ってNAFTA上の義務への優先を認められ、締約国な常にもっともNAFTAへの抵触の度合いが少ない措置を選択する義務を負う。現在のところワシントン条件、バ-ゼル条約およびモントリオール議定書の3条約と、関連の2国間条約がこの除外を受けており、将来に向けては3カ国の合意によってかかる除外を受ける条約を増やすことができる。しかしながら、この104条においては、優先的なMEAの選定が専ら加盟国の政治的なコンセンサスにのみ依存する。したがって、貿易・環境両政策間のすり合わせは行われず、その意味では両者の摩擦の根本的解決の理想型にはなお遠い。
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