1998 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪報道による被疑者・被告人の権利の侵害状況の分析と法的対策についての研究
Project/Area Number |
09720042
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渕野 貴生 東北大学, 法学部, 助手 (20271851)
|
Keywords | 犯罪報道 / 無罪推定法理 / 社会復帰権 / 公正な裁判 / 反論権 / 捜査機関の情報提供 |
Research Abstract |
1. ドイツにおける犯罪報道による被疑者・被告人の適正手続を受ける権利の侵害の構造分析を試み、以下の知見を得た。第一に、犯罪報道による侵害から保護されるべき権利として挙げられる無罪推定法理の犯罪報道との関係での保障の本質は、被告人を社会における予断から保護することにあるが、その中身はさらに二つに分かれる。ひとつは、報道機関が被疑者・被告人を犯人視した結果、社会全体が当該被疑者・被告人を「犯人視」してしまうことからの保護であり、もうひとつは、報道を通じて引き起こされる社会的予断に証人や裁判官が汚染された結果、刑事手続が偏見をもった手続き関係者の下で進行してしまうことからの保護である。このうち前者は社会復帰権と、後者は公正な刑事手続の保障と保護内容を共有している部分があり、この三つの権利は相互に強い関連性を持つ。第二に、犯罪報道による公正な刑事手続を受ける権利の侵害からの保護に対して最終的な法的責任を負うのは国家であり、報道機関に対する規制はかかる国家の義務履行の手段として位置付けられるという点で、いわゆる私人間効力論とは論理構成を異にする。 2. 以上の分析および、報道された者の反論権保障や被疑者側と検察との共同記者会見制度など、ドイツにおいて権利侵害に対して取られているさまざまな手段を手がかりに、日本における犯罪報道を適正手続保障との関係のあり方について考察し、以下の知見を得た。すなわち、第一に、権利侵害構造については、基本的にドイツの考え方を日本に及ぼすことが可能である。第二に、権利侵害に対応する手段としては、捜査機関の情報提供活動の制限や被疑者・被告人側の言い分報道の制度化が望まれる。
|