1997 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会の組織的活動に対する過失犯処罰の当否とその限界の研究
Project/Area Number |
09720046
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋爪 隆 神戸大学, 法学部, 助教授 (70251436)
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Keywords | 組織犯罪 / 過失犯 / 正当化事由 / 法人犯罪 / 両罰規定 |
Research Abstract |
本年度の研究に際しては、まず準備的作業として、(1)法人処罰に関する諸問題、(2)刑法における正当化の理論に関する基礎的な検討を行った。 上記(1)の検討に際しては、法人処罰をめぐる学説の対立、諸外国の立法例、さらに両罰規定の適用を巡る判例・学説の動向などの観点からの検討を行った。その結果としては、(1)法人代表者の行為責任(故意責任)と監督責任(過失責任)を峻別した理論構成が必要と思われること、(2)両罰規定の適用については、通説であるいわゆる構成要件修正説が基本的に支持しうるという結論に達するに至った。 また、上記(2)の検討に際しては、主としてドイツの刑事違法性論に関する学説の検討を中心に行った。ドイツにおいては周知の通り、行政法規を遵守しており社会的に有用性があると認められる行為は「許された危険」であり、結果的に法益侵害が惹起されてもなお正当化されるという見解が一般的であるが、それは事実上、行政法規の遵守を刑法で担保するという発想であり、結果無価値を中心に違法性を理解する立場からは、そのままのかたちでは支持することはできないという結論に至った。具体的には、むしろ法益侵害性の蓋然性の程度という観点から「許された危険」の法理を再検討し、正当化の限界を考察する必要があると思われる。 来年度はこれらの基礎的研究をさらに継続するとともに、具体的な事例群を対象として、組織体活動における過失犯処罰の当否及びその限界について、個別の検討を行いたい。また、理論的研究としては、因果関係論における結果回避可能性の意義、過失犯の結果回避義務と不真正不作為犯の作為義務の関係などの論点についても検討を加えたい。
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