1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720048
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 乾 北海道大学, 法学部, 助教授 (00281775)
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Keywords | 欧州統合 / 民主主義 / 市民権 / シティズンシップ / 市民社会 / ヨーロッパ / 国際統合 / 補完性原理 |
Research Abstract |
本年度は平成9年度に引き続き、ナショナルの枠と伝統的に結びついてきた政治学的諸概念(民主主義・公共性・市民権)を批判的に再検討し、ポスト・ナショナルな政治思想の在り方を探った。それ以前の数年に及ぶ国際統合リーダーシップの研究は、英国マクミラン社から公刊された英文著書に結実した(研究業績参照)。同作業が基本的に統合を進める側のテクノクラシーに焦点を当ててきたのに対して、本研究課題(ヨーロッパ統合における民主主義の問題の検討)は、統合される側の民衆について考えてきた。この背景には、民主主義がナショナルの枠の中でしか作動しておらず、公共空間は国境ごとに分断され、「市民」は「国民」とほぼ同義語化しているという現状がある。これらの点に留意して、主に政治思想史・法哲学の専攻者たちと市民権や民主主義について研究会(月1回)を組織し、議論してきた。基本文献のリストアップ・輪読を通じて、ようやく全体の議論の見取り図ができ、焦点が絞れてきたといえよう。この成果は、上記英文著作の中でも、部分的に活用され、リーダーシップ研究に厚みを持たせることができた。英文著作によって、研究成果の還元を図るという本研究目的の一部は、これで果たせたと思う。のみならず、いくつかの関連論考をこの2年間で発表した。なかでも、「さまよえるヨーロッパ統合:デモクラシーとテクノクラシーの狭間」『世界』論文(1997年11月号)は、本研究プロジェクトの成果を要約的に世に問うたものとなった。本研究は、根本的には、民主主義・市民権・公共性といった政治学の基本概念を、長らく呪縛しつづけたナショナルな枠から解放するという意味を持つ。申請時の研究目的にも述べたことだが、この大きな課題に対して、本研究は小さいけれども重要な一歩を踏み出すことを意味した。2年間での成果は、その課題に照らせば不十分ものであるけれども、今後に活かして、さらに論考を深めてゆきたい。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 遠藤 乾: "Institutional Leadership of Jacques Delors:A Half-Success in Comitology Reforms" 北大法学論集. 48巻5号. 332-350 (1998)
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[Publications] 遠藤 乾: "The Art of Retreat:A Use of Subsidiarity by Jacques Delors 1992-93" 北大法学論集. 48巻6号. 378-394 (1998)
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[Publications] Ken ENDO: "Quelques Commentaires sur le Colloque “Une Etude comparative sur la Decentralisation-les cas du Japon et de la France"" 北大法学論集. 48巻6号. 396-399 (1998)
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[Publications] 遠藤 乾: "重層化する政治空間:ポスト通貨統合の秩序像" 世界. 658号. 96-107 (1999)
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[Publications] Ken ENDO: "The Presidency of the European Commission under Jacques Delors:The Politics of Shared Leadership." Macmillan/St.Martin's Press, 272 (1999)