1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09720049
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 正孝 北海道大学, 法学部, 助教授 (20222292)
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Keywords | 財界 / 財界世話業 / 経済危機 / 高橋是清 / 渋沢栄一 / 和田豊治 / 井上準之助 / 郷誠之助 |
Research Abstract |
本研究では、平成9年度・10年度の両年度にわたって、日本の「財界」の形成と展開を歴史的に解明することをその目的としている。本年度はその初年度として、まず東京大学社会科学研究所と朝日新聞社との共同研究プロジェクト(朝日切抜記事データ・ベースプロジェクト)に参加し、1920年代から現在に至る「財界」及び「財界団体」「財界人」に関する切抜記事の分析を行う機会に恵まれた。これによって、「財界」という語が戦前・戦後そして1970年代以後と意味内容を変化させていったこと、その変化が「財界」の権力構造や役割・形態等の変化と密接な関わりを持っていることが明らかになった。 次に、この作業と、「財界人」の伝記・日記を含む諸資料の整理・分析を通じて、(1)「財界」の形成に渋沢栄一や和田豊治,井上準之助,郷誠之助といった「財界世話業」と呼ばれる人々が深く関わっていたこと、(2)その「財界」の組織化は、第一次世界大戦後の深刻な経済危機克服の過程と平行して行われていったこと等が具体的に明らかとなった。さらに、金融界・中小商工業界・大資本産業界の組織化が別々に進められ、その後それらが統合されていく過程も明らかとなった。統合された「財界」が1930年代前半に攻勢に出て政治進出していく過程についても、高橋是清蔵相を中心とする政局と「財界」との関連を追うことによって解明できた。これらの成果のうち、一本の論文はすでに脱稿済みである(「高橋是清と『挙国一致』内閣」)が、編者の都合により公刊の予定がたっていない。もう一本は、現在鋭意完成を急いでいる。両者とも、平成10年中には公刊されると思われる。これらの論文をあわせ、将来「戦前日本の『財界』と政治」と題する単著を刊行の予定。
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