1997 Fiscal Year Annual Research Report
震災ボランティア活動にみる現代日本人の公共性意識に関する研究
Project/Area Number |
09720060
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
麻野 雅子 三重大学, 人文学部, 助教授 (10262982)
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Keywords | 公共性 / ボランティア活動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代政治思想における公共性に関する理論研究を踏まえつつ、阪神大震災時のボランティア活動に関わった人びとの体験記や活動の記録文書を読み、また、そうした人びとに対して直接インタヴューをすることから、現代の日本人が自らの社会的責務をどのようなものと考え、どのような公共性意識を持っているかを明らかにすることである。 本年度においては、まず、震災ボランティア活動に関する記録文書や体験記の収集を行うことから、研究を開始した。その後、収集した資料の内容を検討し、ボランティア活動に表われている公共性意識の特徴を把握することを中心課題としてきた。その過程で、私的なものに対立する意味での公的な意識という意味ではなく、むしろ「より大きな領域へと開いていく意識」、「他者へとつながろうとする意識」という意味で、公共性の意識を捉える必要があることが明らかとなった。また、そのように公共性の意識を捉えることにより、従来の国家ならびに地方自地治体の行政組織とその周辺を中心とした政治共同体の形成とは違った形態での共同体(共同性)の形成過程を理解することができるようになった。今後は、何故現代社会においてこうした公共性の意識が広がりつつあるのかといった背景や、こうした公共性の意識がどれだけの人々を取り込みどのような強さの政治共同体を形成できるのかといった可能性などについても考えていくことで、現代日本人の公共性意識に対するより深い理解を可能にしていきたい。
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