1998 Fiscal Year Annual Research Report
官僚制の誘因構造と政策活動-合理的選択制度論にもとづくキャリアパス調査-
Project/Area Number |
09720071
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
建林 正彦 関西大学, 法学部, 助教授 (30288790)
|
Keywords | 通産省 / キャリアパス / 省庁再編 |
Research Abstract |
本年度は、通産省幹部のキャリアパスについて、昨年度に収集したデータを整理し、分析を行った。局長以上のポストで退官したものについて、課長以上のいかなるポストを経由してきたかを調べ、幹部官僚の最終ポストとキャリアパスの関係を検討したのである。幹部官僚に限定した調査であり、また他省庁、自治体への出向、海外出張など、通産本省と地方通産局以外への一時的転出をフォローしきれていないため完全なものではないが、従来のキャリアパス分析が事務次官などのトップのみを扱い、その出世コースを逆に遡るものであったのに対し、網羅的に次官レースの敗者を含めて分析することで、従来見過ごされていた事実を見いだすことができたと思われる。第一に、通産省においては、いわゆる官房三課長は、次官レースの決定的なポイントではなかった。多くの局長が官房三課長を次官同様に経験していた。通産審議官やかっての中小企業庁長官には、事務次官よりも多く官房三課長経験者が含まれていた。第二に、事務次官は、他の局長に比べて、機械情報産業局での経験が多く資源エネルギー庁での経験が少ないことが統計的に有意な水準で確認された。従来、通産省では産業政策局という横割り局の強さが指摘されてきたが、この結果から示されていることは、機械情報産業局という原局の重要性であろう。また資源エネルギー庁長官は、資源エネルギー庁での経験が多いのであった。従来、通産省には専門分野としてのいわゆる「畑」が存在しないと言われていたが、資源エネルギー庁については、キャリアにおいても「畑」の存在することが示唆されたということであろう。なおこうした日本官僚制のキャリアパスで得た知見を応用し、日韓の省庁再編における官僚行動の違いを、両国における官僚のインセンティブメカニズムの差から明らかにすることができたことも本研究の成果である。
|