1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09730005
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松村 敏弘 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (70263324)
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Keywords | 混合市場 / 公企業 / 民営化 / 財政投融資 |
Research Abstract |
この研究では、日本の財政投融資制度に関して、産業組織論的な視点から分析した。このための基礎理論として、寡占市場における企業間の競争について分析した。まず異なる目的関数を持つ公企業と私企業が、同じ土俵で、つまり目的関数と生産関数以外の条件はすべて同じであるとして、競争する場合の経済厚生について分析した。その結果、部分民営化(公企業を株式会社化し、一部を除いてその株式を民間部門に売却すること)によって必ず経済厚生が改善することを明らかになった。更に民間企業に比べ公企業の生産性がかなり低い場合には、完全民営化が最適であることも明らかになった。この結果は、財投機関が民間企業と同じ土俵で勝負する限り、なんらかの民営化が望ましいことを示している。 また、公企業が民間企業と異なる役割を果たす可能性についてStackelbergモデルを使って分析した。既存研究では、「公企業はfollowerになるべきである、つまり、潜在的な競争者として民間企業の補完に徹するべきである」という結論が導かれていた。しかし従来の研究では、規模に関する収穫一定が仮定されていた。一方実証研究によって、日本の財投機関の多くには、規模の経済性が働いていることが示されている。本研究では、set up費用を明示的に考え、公企業の果たすべき役割について分析した。その結果、既存研究と異なり、公企業の果たすべき役割は企業の費用構造に依存することがわかった。具体的には、多くの財投機関のように、ある程度の規模の経済性が働き、かつ官民の生産性格差の小さい場合には、公企業がleaderの役割を果たす余地があることがわかった。また、公企業は、望ましい役割を自ら選ぶ誘因を持つかについて分析した。結果は、公企業は必ずしも社会的に望ましい役割を選択するとは限らないというものであった。このことは、財投機関の果たすべき役割を明確に規定する必要があることを示している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Toshihiro Matsumura: "How many firms become leaders?" Australian Economic Papers. 36. 1-13 (1997)
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[Publications] Toshihiro Matsumura: "A Two-stage Price-Setting Dvopoly : Bertrand or Stackelberg" Australian Economic Papers. (発表予定).