1997 Fiscal Year Annual Research Report
ContestにおけるEndogenous Selectionと危険回避度:慎重さは企業家の必須条件か?
Project/Area Number |
09730006
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西村 直子 信州大学, 経済学部, 助教授 (30218200)
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Keywords | Contest / 危険回避度 / 企業家 / 非協力ゲーム |
Research Abstract |
本研究は所有権の帰属が事前に明確でない場合として,R&D競争に代表される企業間のContestに注目する。Contestに勝ち残るか否かは不確実であり,このリスクを担うものとして企業家を位置付ける。危険回避度の異なる2人の経済主体を考え,企業家になるかどうかとContestでどう行動するかの2つの選択を,2段階非協力ゲームの枠組みで分析している。今年度研究の最初の課題は,危険回避度が経済主体間で連続に分布しているとき異なる選択が出現する際の,確定的所得レベルと危険回避度の境界値の分析である.ここで,積極的にContestに投資し企業家として成功する主体が,リスク回避度の低い主体と必ずしも一致せず,またリスク回避度が高い主体が,Contestでの有利性を見越して先にContestにコミットする場合が存在することが,現在までの本研究でわかっている。今年度では,期待効用関数下において,そのような場合の一般的充足条件を導出したが,詳しい定性的分析は,関数形を特定化せざるをえないことがわかった.そこである特定の効用関数のもとで,2人の経済主体の危険回避度の組み合わせで,合計4つの異なる選択結果を生み出す場合分けを示し,確定的賃金レベルの変化がその境界値に及ぼす影響についても調べた.今年度の第2の課題であった2段階ゲームに時間の要素を加えた場合の分析については,未だ途中である.シュタッケルベルグ・ゲームの枠組みで考えた場合には,より危険回避度が高い主体が先手についた場合には,後手をContestから駆逐する戦略にでる場合もありうる.一方,今年度は,以上の分析から得られた仮説を,どのような実験デザインで検証できるかの模索を始めた.来年度早々には,予備実験を実施したい.今後は,残る課題である非連続な3人以上の参加者がいる場合のcoalition形成の可能性の分析と,主体の意思決定基準が非期待効用である場合の分析を進めて行きたい.
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