1997 Fiscal Year Annual Research Report
産業、消費、および技術の構造変化が環境に与える影響の計量的研究
Project/Area Number |
09730024
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池田 明由 早稲田大学, 社会科学部, 助教授 (60222874)
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Keywords | 構造変化 / 技術開発 / 中国環境 / SOx / ボイラ / 石炭ブリケット / エネルギー / 環境分析用産業連関表 |
Research Abstract |
経済の構造変化と環境問題との関わりを考察するに当たり、今年度は、現在急激な経済成長過程にあり、世界の中でももっともドラステックな構造変化を引き起こしている、中国の状況を例にとって実証分析を行った。中国では経済最優先の成長路線をたどっていることの代償として、さまざまな環境問題が生じていることは周知の事実である。しかし広範な環境問題のすべてを取り扱うことはできないので、本研究ではSOxによる大気汚染に問題をしぼった。というのは、SOxは中国が主要エネルギーを石炭に依存していることから生じる問題であり、エネルギーないし経済問題に深くかかわると見られるからである。ところでCO2とは異なりSOxに対してはすでに実用段階の除去技術が複数存在し、あとはその技術導入を経済成長と両立させつついかに取り入れていくかということだけが問題となっている。日本のODAなどもこの技術導入のために支出されてきたようであるが、その結果は必ずしも良いものとはなっていない。ODA供与の技術は中国の経済構造に必ずしも見合ったものとはいえず、そのためにせっかくの最新設備が十分使われなかったりしている。中国の状況を公表されているデータを中心に注意深く観察してみると、経済規模が大きい割に成長のダイナミズムには欠ける内陸や東北地域でSOx問題が深刻であった。さらに数多く広範の散在する一般家庭や飲食店などの中小規模のSOx発生源対策が重要であることがわかった。これらの事実から、中国のSOx対策としては、必ずしも最新設備でなくてもよいから、背後の経済状況によくあった普及可能なSOx防除技術を広く普及させることが重要と結論づけられた。そのような技術としては、流動層ボイラ、石炭のブリケット化などが工学者たちの間で推奨されている。今後はこのような技術が導入されれば、中国全体でどのくらいの効果があるのか、これらの技術は中国の経済状況に本当に見合ったものかどうかを注意深く検討しなければならない。これらのことは次年度の課題となっている。
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[Publications] 池田明由: "家計の消費行動とCO_2の排出" 東海大学教養学部紀要. 25. 53-68 (1995)
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[Publications] 吉岡完治: "環境分析用産業連関表の応用(8)-自動車のLCA分析について-" イノベーション& I・Oテクニ-ク. 6・4. 40-57 (1996)
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[Publications] 池田明由: "接続国際産業連関表に基づく分析の視点と手法" Keio Economic Observatory Occasional Paper. 44. 1-23 (1996)
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[Publications] 池田明由: "わが国製造業の地域構造調整に関する考察" 早稲田社会科学研究. 53. 75-119 (1996)
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[Publications] 池田明由: "公表データにみる中国のSO_2排出の実情と問題点" 早稲田社会科学研究. 55. 45-76 (1997)
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[Publications] 池田明由: "工業統計表・用地用水編にみる製造業の立地分布について" 早稲田社会科学研究. 56. 85-121 (1998)
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[Publications] 山田辰雄: "中国環境研究" 勁草書房, 205 (1995)
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[Publications] 吉岡完治: "実証経済分析の基礎" 慶応義塾大学出版会, 267 (1997)