Research Abstract |
平成9年度は,短期的な地価動向を予測する上で必要な条件の整理と首都圏を対象として取引事例データの収集を行い,市場価格に基づく定点地価データベースを作成している.さらに,次年度の研究活動に対する基礎資料となるよう,整備した定点の地価データベースを用いて地価変動要因に関する簡単な検討を行い,地価動向指数の算出可能性についも併せて検討している. 1.まず,地価動向予測を行う上での具備すべき条件として,過去の研究事例の問題点等から予測法そのものとして速報性,簡便性,市場性,現況再現性といった条件を提示している.また,予測を行う上での市場分類法として,過去の地価の動向を指標としてクラスター分析を行い,用途および空間的な市場を分類する方法を開発している. 2.商業業務地として,東京都千代田区・中央区,および横浜市中心部の2地域を,住宅地として東京都世田谷区を対象に,取引事例データの収集を行い,定点地価データベースの作成を試みている.この際,取引地点の周辺環境等に関する現地調査や立地条件に関する地理情報データを収集した上で,期間別,用途別,市場別にクロスセクション地価関数を推定し,同一の属性を有するデータベースを算出ししている.この結果,地価公示等の鑑定データがいわゆる「認知のラグ」などから市場に関して遅行的であり,かつ価格の振幅も相対的に過小に評価されていることを示している. 3.2.で作成したデータをもとに地価変動要因に関する簡単な検討を行った結果,東京都心部の商業業務地においては需給要因よりも金融要因が極めて大きく影響していることが市場価格から証明されている.また,横浜市中心部商業業務地や周辺住宅地においては金融要因と合わせて,東京都心部からの波及の影響が大きかったことを示している.さらに,地価動向指数に関してもDI(Diffusion Index)用いて簡単な計算を行い,現況再現性,先行性などから有効であることを示している.
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