1997 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの経済開発と国際資金フロー ー韓国とマレーシアの比較研究ー
Project/Area Number |
09730041
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
平木 隆之 北海道東海大学, 国際文化学部, 講師 (00281288)
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Keywords | 東アジアの奇跡 / まぼろしのアジア経済 / 国際資金フロー / 雁行形態パターン / 「序列なき」国際分業 / 直接投資主導型成長 |
Research Abstract |
東アジアの工業化の動態的変化が経済発展段階の違いという序列にしたがって形成されるとする「雁行形態パターン」によって説明されてきたのに対し、本研究では、例えば繊維のような労働集約的な工業化段階を「飛び越え」、いきなり電気・電子産業のような資本・技術集約的産業への進出が可能であるとする「序列なき国際分業パターン」を仮説として主張した。また、東アジアの工業化に関する実証分析の結果、東アジアの中でも比較的早く工業化を行った韓国では、雁行形態パターンが適用できるが、韓国以上に急速な工業化を目指すマレーシアは、繊維産業のGDPにしめる比率は極めて低く、また繊維産業の輸出特化係数も歴史的に一貫して低いことから、序列なき国際分業パターンが主流であるとの観察結果を得た。さらに、東アジアの国際分業パターンの違いと国際資金フローの関係に関する実証分析を行った結果、韓国では雁行形態パターンに沿って、労働集約型産業から資本集約型産業へと緩やかに移行したために、自前で調達できない高度技術の導入も少数の分野に限定されたため、高度技術の獲得を目的とする直接投資の導入もマージナルなものであり、むしろ大規模な工業化をファイナンスするための巨額の借款導入が重視された。一方、経済発展の水準に関係なく、マルチメディア産業のような高度技術集約的産業に進出するマレーシアの野心的な工業化は、常に直接投資をチャンネルとした技術の獲得を必要とした。以上に示したように、本年度の研究では、理論的・実証的分析の結果、一種の共通パターンが存在するといわれる東アジアの経済成長も、韓国とマレーシアでは、その国際分業パターンと国際資金フローの関係という点では異なるのではないかという結論を得た。また、今後は、アジア通貨危機、地球環境問題といった現代的課題のなかで、東アジアへの国際資金フローがどのように変化するのかを実証的に分析する計画である。
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