1997 Fiscal Year Annual Research Report
国際金融市場における国際的なセイフティ・ネットの構築についての理論的実証的研究
Project/Area Number |
09730043
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
増田 正人 法政大学, 社会学部, 助教授 (70219343)
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Keywords | 国際通過体制 / 通貨危機 / IMF(国際通貨基金) / 金融自由化 / 東アジア / 金融規制 / 円の国際化 / セイフティ・ネット |
Research Abstract |
新しい型の通貨危機に対応するために、国際通過体制におけるセイフティ・ネットの研究を進めるというこの研究は、当初の予定よりも早く、アジア各国で通貨危機として顕在化したために、研究計画の変更が余儀なくされた。特に、タイの通貨危機について発生したインドネシア、韓国にたいする国際的な金融支援は、従来の枠組みを大きく変更するものであった。また、アジアの通貨危機の発生は各国ごとに異なっており、単純に、国際金融システムの変化と投機的な短期資金移動の問題にとどまらない大きな問題を含んでいる。したがって、本年度の研究は、IMFや他の国際機関をはじめとして、緊急の事後的対策としてとられた救済策の内容と評価、そして、各国の通貨危機の発生に至る経済データの収集と分類化に重点をおいて行った。その中でも、特にIMFに焦点をおいて、事前的規制の強化のあり方と事後的な対策として創設されたNABについて検討を行った。IMFの事前的規制は、実際には、アジアの通貨危機を未然に防止できなかったという点で、多くの改善点が残っていると考えることもできるが、本研究の中では、本質的に未然防止は不可能であるという結果が指摘されている。また、事後的な救済策とパニックの防止策においても、多くの改善点があることが明らかにされている。 しかし、アジアの通貨危機は、未だ進行途上に有り、多くの教訓をわれわれに与えるものとして様々な材料を提供している。特に、アジア各国の変動相場制度への移行は、アジア地域におけるドル離れの問題という側面も有しており、アジア域内経済の発展と円の国際化とも密接に関係している。さらに、日本の金融システムの不安定化の問題は、本研究の当初の予想を超えて深刻化しており、アジアの通貨危機の連鎖に大きな影響を与えている。これらの点については、1998年度において研究を進めていくことにする。
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