1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09730048
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石山 幸彦 横浜国立大学, 経済学部, 助教授 (90251735)
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Keywords | ヨーロッパ統合 / 経済統合 / 共同市場 / フランス経済 |
Research Abstract |
ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体内部資料の分析を中心に、1952年に設立された同共同体の活動など、第2次大戦後のヨーロッパ経済統合の端緒とその初期の実態を研究し、以下のような成果をあげた。 第2次大戦後の西ヨーロッパでは、戦後の混乱と米ソ2大超大国の出現に直面し、連邦制による各国の統合、すなわち政治的にも経済的にも強大な「ヨーロッパ連邦」ないし「ヨーロッパ合衆国」の建設、を指向する運動が活発化していた。そうした運動の最初の成果としてヨーロッパ石炭鉄鋼共同体が創設され、フランス、西ドイツなど6カ国の石炭、鉄鋼産業を共同市場のなかに統合し、これら産業に対する行政を共同体が実施することになった。だが、共同体政策の実行機関である最高機関は、当初期待された合理的投資計画の立案と実行、カルテルなどの独占規制を十分に果すことはできなかった。その原因は、共同体の財源が僅かしか確保されていなかったこと、それゆえ各国の市場の実態、商習慣などを把握することさえ困難だったことにあった。その結果、1958年のEEC創設時には、ヨーロッパ統合運動から連邦建設の目標は大きく後退しており、以後の経済統合は参加諸国間の貿易自由化を中心とする方向に性格を変えていた。 以上の成果は、平成9年10月の土地制度史学会秋季学術大会で「戦後西ヨーロッパの再建と経済統合の進展」と題して報告し、論文「戦後ヨーロッパの再建と経済統合の進展(1945-1958年)-連邦主義の理想と現実-」を『土地制度史学』第159号,1998年4月に掲載予定である。 今後は、以上の石炭鉄鋼共同体の政策がフランス経済にとってはどのような意味を持ったのか、EECの設立とも関連づけながら解明して行きたい。
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