1997 Fiscal Year Annual Research Report
家計行動の多様化による公的負担の世代間及び世代内格差への影響
Project/Area Number |
09730062
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高原 由紀子 大阪市立大学, 経済学部, 助手 (90291434)
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Keywords | 出生率 / 結婚 / 晩婚 / 女性の就業 |
Research Abstract |
近年、家計の直面する様々な選択とそれに関連する構造変化の中でも、急速な出生率の低下と高齢化の展開は、マクロ的にも賦課方式の年金制度の行き詰まりや若年層の租税負担の上昇、さらには貯蓄率の減少や労働力不足による経済成長の抑制などをもたらす危惧がある。そこで、数々の問題をもたらす出生率低下の要因について、女性の結婚行動の変化と出生率の関係に着目して、検証を行うこととした。 Beckerに代表される新古典派の理論によれば、家計の持つ子供の人数は、所得を所与とし、母親の機会費用を含めた育児費用と子供から得られる効用を比較して決定される。そこでは、女性の高学歴化や賃金の上昇は、母親の機会費用を増加をもたらすため、家計の最適な子供数は減少することが指摘されている。他方、現在の出生率の低下は女性の晩婚化が原因であり、単に出産時期の遅れをもたらすものであって、一人の女性が生涯において産む子供の数(完結出生児数)には影響しないわけであるから、何れ出生率は上昇するという議論もなされている。 その何れが成立しているかを平均初婚年齢、未婚率、就業や育児支援政策に関する変数等を説明変数に加えた出生率関数を推定することによって検証した。その結果、結婚しない女性(晩婚、非婚の女性)が単に出産時期を遅らせているわけではない、言い換えれば生涯において生む子供数が少ないことが、出生率の低下の要因であることを示した。
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