1997 Fiscal Year Annual Research Report
電磁場中における、多粒子量子力学系に対する散乱理論について
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09740109
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
足立 匡義 神戸大学, 理学部, 講師 (30281158)
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Keywords | 散乱理論 / 多体問題 / 漸近完全性 / 波動作用素 / Stark効果 / Schrodinger作用素 |
Research Abstract |
定電場中での量子力学系、即ちStark効果を持つ系の散乱理論において、その系の運動を記述するHamiltonianによる散乱状態の時間発展を、別のHamiltonianによる状態の時間発展により、t→±∞のときに漸近的に表せるかという漸近完全性の問題の1つである。この別のHamiltonianが表す系の運動は、大雑把には、2体問題ならば、粒子間距離は時間が経つにつれて大きくなり、それぞれの粒子が自由粒子のように振る舞い、多体問題ならば、幾つかの粒子がクラスターを形成し、それらのクラスター間距離が時間の経過とともに大きくなり、それぞれのクラスターは自由粒子のように振る舞うもので、多体問題での漸近的な表現は、前記のような幾つかのHamiltonianによる状態の時間発展の重ね合わせで実現される。実際には、考えている系の、粒子間の相互作用ポテンシャルが短距離型の場合と長距離型の場合で、Hamiltonianの取り方が異なり、特に長距離型の場合、ポテンシャンの部分を、時間に依存する、運動量のみで表される擬微分作用素で置き換えて出来る、時間に依存したHamiltonianによる状態の時間発展を採用する。このことは、通常のSchrodinger作用素に対する散乱理論においても同様で、長距離型ポテンシャルの影響による修正項を運動量によって表現する。一方、通常のSchrodinger作用素に対する散乱理論では、eikonal方程式の解を用いて、比較する状態の時間発展の、位置による表現もなされている。Yafaev氏は、これを漸近完全性の破れの証明に用いた。ある意味では強力な表現である。しかし、Stark効果がある場合には、その表現については、これまでに導入もされていない。そこでこの場合に、比較する状態の時間発展の、位置による表現を定式化し、それにより定義される波動作用素の存在と完全性を2体問題に対して示した。
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