1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740117
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
木坂 正史 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (70244671)
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Keywords | 複素力学系 / 超越整関数 / ジュリア集合 |
Research Abstract |
本課題の目的は超越整関数のジュリア集合の位相的性質について研究することにあった.今年度は特に連結性と局所連結性についてある程度の結果を得た. まず,ジュリア集合に無限遠点を加えたリーマン球面内のコンパクト集合の連結性については,「連結であることは多重連結な遊走領域を持たないことと同値である」なる必要十分条件が得られた.また更にこれの系としてジュリア集合が連結であるためのいくつかの十分条件を得た. ジュリア集合の連結性については 1.ファトウ集合の連結成分がすべて有界である場合 2.ファトウ集合が非有界な連結成分を持つ場合 の2つの場合に分けて考察した.1.については「ファトウ集合のすべての連結成分が単連結ならばジュリア集合は連結である」という1つの十分条件を得た.2.については,存在する非有界な連結成分がattractive basin,parabolic basin,Siegel disk,Baker domainのどれであるかに応じてジュリア集合が非連結であるための十分条件を得た.例えばSiegel diskの場合には「無限遠点がaccessibleでる」というのが十分条件である. また局所連結性についてはまず,ファトウ集合の非有界で周期的な連結成分の境界は,一部の場合を除いて局所連結にはならないことを示した.またこの結果を用いて,ファトウ集合が非有界で周期的な連結成分Uを持つ場合には,一部の場合(即ち,Uが周期nのBaker domainでf^n|Uが無限対1の写像であるとき)を除いて,ジュリア集合は局所連結にはならないことを示した.これは超越整関数のジュリア集合の局所連結性が,多項式写像の場合と比べると著しく異なることを示している.また上記の例外的な場合も,Baker domain Uの性質によっては,やはり同じ結論が導かれることも明らかになった.
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