1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740127
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻井 正人 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20251598)
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Keywords | カオス / 力学系 / エントロピー / 1次元力学系 / エルゴード理論 |
Research Abstract |
位相エントロピーのパラメータについての依存の単調性に関する問題について、その問題と力学系のエルゴード論的な性質の関係を研究した。1次元の2次関数族についてはMilnorとThurstonによってエントロピーの単調性定理が知られている。我々は2次写像のその定理の証明を複素平面上の正則2次微分の空間に作用するルエル作用素のスペクトル的な性質を使って証明する事に成功した。これは1次元力学系の族の単調性とエルゴード理論の関係は当初から期待されていたのでこれは1つの進展であった。この証明はある意味ではタイヒミュラー理論を使った証明の局所化にすぎないが、次のような利点がある。第1はある系における力学系族の変化がこれまで知られていた証明のように族全体の性質を利用するのではなく、その系のエルゴード的性質から導かれることにある。第2は、実または複素1次元力学系のエルゴード的性質についてはすでに様々な研究がありそれらとの関連が期待されることである。実際、イスラエルの数学者Levinは我々が証明の中で使った力学系のと非常に似た等式を全く別の観点から見つけていた。また上の証明をCollet-Eckmann条件(臨界点のリヤプノフ指数が正であるという条件)を満たす系に拡張することをフランスの数学者Sandsによって示唆され、それについては最近力学的ゼータ関数の計算の技法を使って成し遂げられた。第3にルエル作用素自体は係数の取り方によって様々なものが考えられ、それが2次関数の力学系の単調性を拡張するとき重要になると考えられることである。また上記のルエル作用素の実1次元における対応物であるペロン=フロベニウス作用素について同様の議論をすることで、区分線形な1次元力学系のいくつか族について、その位相エントロピーの単調性が証明できることがわかった。
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