1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740149
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
村木 尚文 山口大学, 工学部, 助教授 (60229979)
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Keywords | 量子確率 / ブラウン運動 / フォック空間 / 逆正弦法則 / 中心極限定理 |
Research Abstract |
報告者は量子確率論に関する文献・論文を収集・調査し、量子確率空間における独立性・極限定理・非可換ブラウン運動に関する研究を行った。計算機実験等も併用して得られた結果が以下のものである。 論文[1]において、報告者は、モノトーンフォック空間と名付けた新しい型のフォック空間を導入することにより、量子ブラウン運動(非可換wiener過程)の新しい例を構成した。これは、以前の論文で導入した離散型のモノトーンフォック空間の自然な連続版である。このモノトーンフォック空間上に、生成作用素・消減作用素の一次結合の形で、自然に場の演算子を定義すると、このようにして定義される量子確率過程は、B.Kummererの意味で独立増分な作用素過程になっており、ちょうど非可換ブラウン運動と見なせることがわかった。またこの非可換ブラウン運動は、以前に構成した非可換ランダムウォークの自然なスケール極限であることもわかった。また、そこに出現する中心極限分布は、平均0、分散tに正規化された逆正弦法則であることを見いだした。 報告者は現在、このモノトーンフォック空間上の非可換ブラウン運動(=非可換Wiener過程)に基づいた確率積分の理論を展開することを試みている最中である。離散時間のモノトーンフォック空間による有限モデルを考えると、確率積分の議論を展開することは十分に可能であると思われる。連続時間モノトーンフォック空間上で、量子確率積分と量子Ito公式を得ること、及び、モノトーンフォック空間上に非可換ポアッソン過程を構成することが現在の課題であり、現在、成果の上がったところまで整理しているところである。成果がまとまり次第論文投稿を行う予定である。
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