1997 Fiscal Year Annual Research Report
大強度陽子加速器に二次粒子蓄積リングを接続した場合の素粒子実験の可能性の探究
Project/Area Number |
09740184
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 琢哉 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40261549)
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Research Abstract |
本研究は、現在建設が計画されている、エネルギー50GeV、平均電流10μAの大強度超伝導陽子シンクロトロンに加えて、二次粒子蓄積リングを建設・接続した場合に可能となる素粒子実験を検討することを目的としている。具体的には、大強度陽子ビームが固定標的に衝突し、その際生ずる二次粒子π中間子を蓄積リングに入射し、π中間子の崩壊粒子であるμ粒子を蓄積した場合に可能となる研究挙げ、その研究が現在までの素粒子物理学の知見にどのような影響を及ぼすか考察する。本年度行なわれた考察により、蓄積リングから放出されるニュートリノを利用したv_e-v_r間ニュートリノ振動の探究、具体的には、以下に述べる方法による実験可能性が追求された。π^+中間子を蓄積リングに入射すると、数μs以内にμ^+とv_μに崩壊する。ここで生じたμ^+の一部は蓄積リング内を周回する軌道に捕獲される。その後μ^+粒子は数百μsにわたってe^+、v_eそしてv_μにゆっくりと崩壊する。ここで放出されるv_eがニュートリノ振動によってv_rに変化し、さらにこのv_rが固定標的に衝突した際、弱荷電流反応によってr^-は約1/5の確率でμ^-、v_rそしてv_μに即座に崩壊する。従って終状態には負電荷のμ^-が測定されることになる。一方ニュートリノ振動が起こらない場合には、π^+中間子が崩壊した後に、蓄積リングから直接生ずるのはv_μであり、この粒子の弱荷電流反応によって生ずるのは正電荷のμ^+である。蓄積リングに入射されたπ^+中間子が崩壊した後に、負電荷のμ^-が測定されればニュートリノ振動の証拠を得たことになる。以上述べた方法による実験の実現性、特に生成されるニュートリノのエネルギーと生成数についてさらに具体的な考察が必要である。この他、μ粒子の異常磁気モーメントの測定、μ^+μ^-衝突型加速器の実現可能性の探究についての考察も行なわれた。
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