1998 Fiscal Year Annual Research Report
重い原子核に深く束縛されたパイ中間子原子の構造と生成
Project/Area Number |
09740202
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
比連崎 悟 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (60283925)
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Keywords | パイ中間子原子 / (d,^3He)反応 / 中間エネルギー原子核反応 |
Research Abstract |
本研究の今年度の実績は以下の通りである。 (1) 異なる標的核を使った場合のパイ中間子原子生成反応の理論的研究及び実験的検証。 以前使われた鉛208と異なる鉛のアイソトープ、鉛206を標的核として使用すれば現在の実験精度で、最も深く束縛されたパイ中間子原子のls状態が見えることを理論的に明確に予言した。現実的な実験状況を考慮した計算で示した。この理論的予言に基づいた実験が1998年10月にドイツGSI研究所で行われ1s状態をはっきりと蜆測することに世界で始めて成功した。これにより理論計算の確かさも確認された。さらに系統的な研究の端緒を開いたと言える。 (2) パイ中間子原子に対する原子核変形の効果 変形した原子核にパイ中間子原子を生成することによって、現在不明なパイ中間子-原子核相互作用の詳細な部分が観測出来る可能性がある。この点について理論的研究を行った。原子核によるパイ中間子吸収効果が大き過ぎず同時に変形効果が小さすぎない特別な核を上手く使えば観測できる可能性があることがわかった。 (3) パイ中間子-中性子空孔残留相互作用の効果 我々の提案した(d,3He)によって生成されたパイ中間子原子は鉛207の回りに束縛されており、原子核の状態としてはl空孔状態と成っている。この1粒子(パイ中間子)-1空孔(中性子)状態の間の相互作用を考えて束縛エネルギー等に対する効果を理論的に評価した。この効果は約10keVの程度でありパイ中問子原子構造の精密計算においては考慮する必要があることがわかった。(4) 核内η/ω中間子生成 パイ中間子原子生成に使われたのと同じ(d,3He)反応を使って原子核内に、異なる中間子ηやωを生成する可能性について理論的に考察した。実験も具体的に計画されている。
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[Publications] S.Hirenzaki: "Neutron prok-up pion transfer reactions for the formation of deeply bound pionic atoms in ^<208>pb" Nuelear Physics. A628. 403-416 (1998)
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[Publications] T.Yamazaki: "Effective Pion Mass in the Nuclear Medium deduced from deeply bound pronic statec in ^<207>pb" Physics Letter. B418. 246-251 (1998)
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[Publications] 比連崎 悟: "パイ中間子原子の深部構造" (株)丸善「パリティ」. 5月号. 23-30 (1998)