1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740203
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山本 一博 広島大学, 理学部, 助手 (50284154)
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Keywords | 宇宙論 / 初期密度揺らぎ / 構造形成 / 宇宙背景放射 |
Research Abstract |
今年度の研究課題『1Mpc以下の小さなスケールの密度揺らぎについて詳細な解析を行い、構造形成の初期条件となる線形段階での進化を明らかにすること』に対して、定量的かつ系統的な解析を行い、目標を達成し、以下の成果を得た。解析は、コールドダ-クマタ-(CDM)、バリオンと電子、フォトン、ニュートリノの各成分について宇宙論的摂動論に基づいた密度揺らぎの進化を数値的に解くことによって行なった。目的とする銀河スケールより小さなスケールでは、バリオンと電子の流体とフォトン輻射場がコンプトン散乱を通して相互作用するため、多様な物理的スケールを生じ、密度揺らぎの振舞いを決定している。このような小さなスケールでは、これまで正確な解析がなされていないため、取扱いのための定式化も同時に行った。小スケールのバリオン揺らぎの振舞に関して、新たに次の二点を指摘した。 第一に、バリオン流体とフォトン輻射場の揺らぎは、シルク減衰によりいったん消失するが、CDMを含むモデルでは、バリオン流体とフォトン輻射場の一流体近似が破れると、再結合前の時代でもバリオン密度揺らぎは(1+z)^<-7/2>に比例し成長する。再結合の時点でCDMの密度揺らぎの振幅に対し、バリオン密度揺らぎは〜10^<-2>Ω^<1/2>_程度の振幅まで成長する(この値は、スケールによらない)。この成長では、CDM揺らぎの作る重力とフォトン輻射場との摩擦力が釣り合いを保っている。第二点として、再結合後のバリオン流体の音速について、再結合後しばらく有効断熱指数がγ=1である時代が小さいスケールでは生じる。これは10^<-4>程度再結合せず残った電子を媒介として背景輻射場とバリオン流体とのエネルギーの輸送が有効なためである。 密度揺らぎの進化を表すため、Bardeen等の遷移関数がよく用いられているが、これはバリオン物質の密度が無視できる場合にのみ有効である。バリオン物質の割合が大きい場合にも適用可能で、かつ大きなスケールから1M【of sun】程度の小さなスケールまで適用可能な遷移関数を宇宙論パラメーターの解析的関数として与えた。この結果は、初期天体の形成を準解析的に議論する場合や数値シュミレーションを行う際の初期条件としても有用なものである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 山本一博(広大・理)、 杉山直、 佐藤文隆(京大・理): "Cosmological Baryon Sound Waves coupled with the Primeval Radiation" Physical Review. D56. 7566-7577 (1997)
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[Publications] 山本一博(広大・理)、 杉山直、 佐藤文隆(京大・理): "Evolution of Small Scale Cosmological Baryon Perturbations and Matter Functions" Astrophysical Journal. (印刷中). (1998)