1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09740206
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
塚本 俊夫 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (40217287)
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Keywords | 暗黒物質 / 無機シンチレータ / 低温特性 / 蛍光ボロメータ / 素粒子実験 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、無機シンチレーション結晶の低温での振る舞いについて研究を行った。 NaI(Tl)は古くから利用されている標準的なシンチレーション結晶であるが、ドープされているTlが発光中心となり、発光量が大きい。これに似た結晶であるCsIも同様にTlをドープすることにより発光量を増加させているが、昨年度の調査により、純粋なCsIが、常温下では、NaI(Tl)の3%であるのに対し、-170℃まで冷却すると、73%まで上昇することが分かっている。 この類比より、常温下でほとんど発光しない、不純物を取り除いたNaI結晶を入手し、-100℃まで冷却し、発光特性を調査し、常温下で5%程度の発光量が5倍程度まで増加することを見出した。 また、BaF_2結晶は、昨年度の研究で興味深い温度特性を示したため、その他のフッ素を含む結晶についても、研究を進めた。中でもごく最近になって大きな透明結晶を得ることに成功したCeF_3はその温度特性が十分には研究されておらず、サンプルを入手し、その温度特性を調べたが、現時点では、強い温度依存性を見出してはいない。新開発結晶のためサンプルによって異なる振る舞いを示す可能性もあり、複数のサンプルに対しての研究を進めることが望ましく、現在、他のサンプルの入手を試みている。 一方で、ダークマター探索でボロメタ検出器を用いる際、光情報も組み合わせることでバックグラウンド除去を完全なものにすることを目的として、本研究を開始したが、光情報そのものから、粒子識別を行うことも可能である。それは、シンチレーションより発生するシグナルの時間的分布の違いに着目する方法であり、一般に、波形弁別法と言われる。発光量同様、減衰時間も温度とともに変化するため、低温下での波形は常温と異なるはずである。現在、結晶を冷やすことで、波形弁別が、より正確に行えるかどうかの、検討を開始している。
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