1997 Fiscal Year Annual Research Report
リチウムドリフト法とイオン注入法を組み合わせた新型シリコン検出器の開発-長期安定で厚肉な宇宙重粒子線検出器を目指して-
Project/Area Number |
09740218
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
柏木 利介 神奈川大学, 工学部, 専任講師 (40202006)
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Keywords | 放射線検出器 / リチウム・ドリフト法 / シリコン検出器 |
Research Abstract |
従来のLiドリフト型Si検出器では周囲環境に弱い金蒸着電極が表面障壁を作るために使用されていたが、本研究ではSi表面に高濃度ボロンドープを行い、Liドリフト法と組み合わせる事でPN接合をSi内部に作り、厚肉でしかも安定なSi(Li)検出器を作ることを目的としている。 高濃度ボロンドープを行う方法は、当初イオン注入法を使う事を考えていたが、ラディエーションダメ-ジの心配のあるこの方法に代わって、イオン拡散法で高濃度ボロンド-ブを行うことに変更した。通常の拡散法は100μm程度に深くボロンが侵入してしまい、この層が放射線に対して不感領域となることで本研究の目的には合わないと考えていたのだが、1μm程度の薄さに、しかも10^<20>[cm^3]程度の高濃度ドープが出来る塗布材を見つけたことで拡散法に変更したのである。 また、原理的にイオン拡散法は高温処理が必要であるが、高温にSiウェハ-をさらすとキャリアのライフタイムが減少してしまうことが様々な実験で分かり、結果としてSiが相転移を起こさない900度以下の温度では、安全にイオン拡散を行うことができることが分かった。 実際にこの拡散法を試し、直径3インチφで厚さが4mmtの素材に対して表面(〜1μmt)を高濃度にボロン・ドープした後で逆側の面からLiドリフトを行ったところ、従来よりも安定なドリフトを行う事ができ、比抵抗も100kΩcmを越える素材を作る事ができた。しかも得られた検出器にアルファ線を照射した結果、この大面積な検出器に対して140keV(FWHM)の良好なエネルギー分解能が得られた。 ただし、現在の検出器の漏れ電流は100μAと大きいが、これは側面リ-クであると思われ、今後はP+またはNストップの漏れ電流防止処理を行って更に良好な検出器を製作していきたいと考えている。
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[Publications] T.Sakaguchi, T.Kashiwagi, et al: "Radiation Dosimetry Measurements with Real Time Radiation Monitoring Device(RRMD)-II in Space Shyttle STS-79" Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36. 7453-7459 (1997)
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[Publications] 長谷部信行, 柏木利介, 他: "シリコン検出器中における高速軽イオンのエネルギー損失の揺らぎ" 愛媛大学工学部紀要. 第17巻. 473-482 (1998)